私がアドバイザーとして関わっている総合格闘技団体の「RIZIN」が8月9、10日に横浜で興行を行なったのですが、そこで新型コロナウイルスに関連してさまざまなことが経験値として分かりました。その観点からは、政府が分科会の議論を経て8月24日に決定した、イベントの参加人数5000人制限を来月末まで延長するという決定は本当に正しいのか、大きな疑問を感じざるを得ません。
RIZINの興行から分かったこと
最初にRIZINが興行で講じた感染防止策について説明しておくと、かなり厳格な措置を講じました。来場する観客については、事前の連絡先登録、入場時の検温、観戦中のマスク着用義務付け、声を出しての声援の禁止、密を防止するために客席は一席おき、興行中の休憩なし、喫煙スペースも閉鎖しました。当然、会場のドアは開け放して換気にもかなり留意しました。
出場する選手やトレーナー、レフェリーなどについては、興行の数日前にPCR検査を行い、その後は興行当日まで外部との接触を基本的に禁じました。そして興行の当日は、選手控室に入れる人数やリングに向かう通路を使える人数なども厳格に制限しました。
そして、これらの感染防止策について、事前に会場の地元の横浜市長に説明し、納得してもらいました。かつ、興行の当日はスポーツ庁の役人が感染防止策を視察に来て、その厳格さを評価してくれました。
ちなみに、試合については、コロナの関係で外国人選手を招聘できない中で、日本人選手だけで組めるベストの対戦を惜しみなく提供しました。
では興行の結果がどうだったかというと、1万人収容の会場で入場者数を4500人程度に制限したにもかかわらず、チケットはソールドアウトさせることができませんでした。昨年の大みそかの興行では2万枚以上のチケットが売れたことを考えると、いくら対戦カードが日本人ばかりとはいえ、チケットの売れ行きは異常なまでに芳しくなかったのです。
その一方で、RIZINは資金調達のためのクラウドファンディングを行なっていたのですが、途中で横浜大会のオンライン観戦を特典として加えたところ、応募が一気に増えて、最終的に集まった金額は目標の5000万円を超えました。
これらの事実から分かるのは、いくら総合格闘技のファンでもコロナ感染が怖い人は会場には来ることはせず、オンラインで試合を観戦したということです。
よく考えたら同じことは他のスポーツやコンサートなどでも起きています。例えば、プロ野球でも観客数は5000人が上限ですが、主催者発表の入場者数を見ると、チケットがソールドアウトしていない試合がかなりあります。