数年前から上海の夏祭りに参加していたという日本人の友人も「以前は上海在住の日本人向けのような感じで、日本人の数が多かったですが、ここ数年は圧倒的に中国人が増えて、すっかり地元のイベントになりました。今年は新型コロナの影響もあって、参加者のほとんどが中国人。でも、盆踊りの踊り方とか、ホント、板についていてびっくりしますよ。一体どこで覚えたんですか?と聞きたくなるくらい(笑)。おそらくSNSとか動画で情報収集しているのだと思います」と語る。
杭州で行われた夏祭りに参加した友人にも話を聞いてみた。杭州ではショッピングセンターではなく、セレクトショップやホテル、レストランなどが集積する文化エリアで7月末から3日間、「夏夜游園会」という夏祭りが開催された。約60の露店が出て、線香花火などで遊ぶイベントもあった。杭州市の繁華街から離れているにもかかわらず、若い女性などを中心に大盛況だったという。
日本人が想像する以上に
日本文化が好きだという人が増えている
この杭州の夏祭りに参加した友人は、何度も日本旅行をしているリピーター。彼によると、「日本に行ったことがある人だけでなく、行ったことがない人でも、アニメやドラマの影響を強く受けていて、日本の夏祭りのことは皆よく知っているんです。浴衣を着て花火をするのは、まるで自分が日本のドラマの主人公になったような気分になるもの。特別感があるんです。異文化体験であり、彼女たちが大好きなコスプレの一つでもありますね」
そういえば、ここ数年、中国の若い女性の間では漢服ブームが起きており、中国国内の観光地などでは、漢服を着てポーズを決め、写真を撮っている姿をよく見かける。その中には日本のセーラー服姿や浴衣姿もあるが、彼女たちにとっては、それも一つの「自己表現」の場なのだろう。
その友人によると、浴衣もセーラー服も中国の通販サイトで簡単に購入できるという。夏祭りの屋台で使う小道具などもすべて通販サイトで購入して取り揃えられるそうだが、綿あめを製造する機械まで購入でき、日本の夏祭りをそっくり再現できてしまうとは驚きだ。
このように、中国、とくに上海や杭州などの大都市では、日本人が想像する以上に日本文化が好きだという人がいつの間にか増えており、そうした人々の嗜好が社会に広がっているように感じる。
「MUJI」や「ニトリ」などの日用品や家具などを愛用する人も増えているし、日本食レストランで寿司を食べることも、いまや日常の一部だ。若者の間では、依然として日本のアニメは絶大な人気を誇っていて、生活と切っても切り離せなくなっている。
浴衣を着て夏祭りに繰り出す人が増えているのも、そんな豊かになった社会を反映しているのではないかと思う。