米連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策の枠組みを見直し、微妙ながらも明確に政策の主軸を物価から雇用に移した。実務上の意義は大きくない。インフレ率はFRBの目標とする2%をすでに下回っており、失業率は10%を超える。そうした中で政策金利は向こう数年間、ゼロ近辺にとどまる見通しだった。それ自体は変わっていない。だがこれは、制度的・哲学的に重要な転換である。FRBが107年の歴史の中で行ってきた他の方針転換のように、今回も激動する世界に対応して行われた。各国中銀は長年、失業率とインフレ率がトレードオフの関係にあるという前提に基づいて政策運営を行ってきた。これは失業率が「自然」な水準を下回るとインフレ率は上昇し始めるという関係で、フィリップス曲線と呼ばれる。つまり、失業率は高すぎる水準にも低すぎる水準にもなり得るということだ。
FRB「最大雇用」重視へ転換、変わる世界に対応
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