武田コンシューマーヘルスケア本社武田コンシューマーヘルスケア本社 Photo by Masataka Tsuchimoto

国内製薬最大手の武田薬品工業が、この数年間、譲渡の臆測が絶えなかった大衆薬子会社を遂に外資系投資ファンドへ売却すると発表した。近年業績が落ち込んでいた子会社の売却額2420億円は高いのか安いのか。売却後の子会社のアップサイド、ダウンサイドを予想してみた。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

「大きな変革には必ず痛みが伴う」
社長の弁明に一部創業家筋は大激怒

 国内製薬最大手で世界のメガファーマ(巨大製薬会社)の一角を占める武田薬品工業が、大衆薬(OTC医薬品)子会社の武田コンシューマーヘルスケアを米投資ファンド、ブラックストーンへ売却すると発表した。売却額は2420億円。年度末にクロージングする予定だ。

 武田コンシューマーヘルスケアは、ビタミンB1誘導体製剤「アリナミン」、風邪薬「ベンザ」、胃腸薬「タケダ漢方胃腸薬」などを手掛ける総合大衆薬メーカーだ。特に1954年発売のアリナミンは、「昔は風邪薬として飲む患者もいた」(武田薬品OB)という逸話が残るほど大ヒットし、長年、武田薬品の顔として親しまれてきた。大衆薬業界ではトップの大正製薬には及ばないものの、長年国内上位に君臨していた。

 売却の臆測自体は、武田薬品が大衆薬事業を分社化して2016年に武田コンシューマーヘルスケアが誕生した頃から、社内外でくすぶっていた。国内外の大手製薬会社の経営の潮流として、大衆薬事業から撤退し、医療用医薬品にリソースを集中させる流れがあったからだ。

 だが分社化当時の杉本雅史社長(現ロート製薬社長)は「連結業績に貢献しており、好調な限り、身売りはないと思う」と否定。親会社である武田薬品のクリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者)も節目ごとに、「業績に満足している」などと語り、その臆測を火消ししてきた。

 武田薬品はその財務的意図を否定するものの、結果として今回の売却で、アイルランドの大手バイオ医薬シャイアーの巨額買収後のレバレッジ低下目標(合計約100億ドルのノンコア資産売却)を達成する。

 ウェバー社長は売却発表に際し、「日本の従業員やこれまでのタケダを作り上げてきた先人にとっても非常につらいこと」「大きな変革を行うときは必ず痛みが伴います」と、しゃくし定規とも取れるコメントを出した。

 シャイアー買収に反対し、武田コンシューマーヘルスケア売却にも反対してきた武田薬品の一部創業家筋は大激怒だ。