安倍総理為替に始まり、為替に終わったアベノミクスの真の成果とは何だったのか Photo:Pool/gettyimages

安倍総理が辞任表明
次期政権の「色」は当面、掴みづらい

 8月28日、安倍総理は7年8ヵ月という史上最長となる在任期間の末、健康問題を理由に辞意を表明した。

 新型コロナウイルスの感染拡大に小康状態が見られること、冬の流行に備えて万難を排した政治体制を整える必要があること、また来年9月には総裁任期の満了が控えていることを踏まえれば、政治空白をつくれるタイミングは今しかなかったという声は多く、決断のタイミングについては前向きに評価する声が多い。

 第一報を受けた金融市場では、円相場が急伸する動きが見られたものの、「新しいトレンドの始まり」と言えるまでの動きには発展していない。「アベノミクスの始まりと共に円安局面が始まったのだから、終わりと共に円高局面が始まる」との解説はわかりやすいが、それは次期政権の全貌が明らかになるまでわからない話だ。戦時中に例えられる特殊な状況においては、「誰が総理になってもやるべきことは同じ」という本質的な目線も忘れたくない。

 次期総理に関し、金融市場は「安倍政権の居抜き」とも例えられる「菅総理シナリオ」を希望している。しかし、金融市場がその政権の「色」を判断するのは、主に金融政策の中身である。当分は日銀金融政策決定会合の現状維持が見込まれる以上、誰が総理になっても「色」が読み取りにくい時間帯は続くだろう。

 目線を来年まで延ばせば、来春に任期を迎える桜井審議委員の後任などが、ひと際強い関心を引くのではないだろうか。いずれにせよ、ありもしない金融緩和の効果を強弁して金融システムに負荷をかけるような、なりふり構わない緩和意欲は、安倍政権後期では退潮になった。菅総理シナリオならば、そのような路線が継続されると金融市場は期待しているようだ。

目に見える「結果」の
多かったアベノミクス

 これから、安倍政権のマクロ経済政策(以下アベノミクス)を総括する論説が続々と出てくるだろう。すでに見られているものの多くは好意的だ。確かに、「政治において最も重要なことは結果を出すこと」(8月28日の辞任会見)という安倍総理自身の言葉を借りるならば、アベノミクスは、政策との因果に関しての検証が必要であるにせよ、目に見える結果が多かったのは事実である。

 アベノミクスの起源は諸説ある。オフィシャルに言うなれば、第二次安倍政権が発足した2012年12月26日を起点とするのが適切なのだろう。

 だが、市場参加者の体感としては、2012年11月14日と考える向きが恐らく主流ではないか。同日に行われた党首討論において、民主党(当時)の党首だった野田首相が安倍自民党総裁に対して急遽、衆議院の解散の日付(同年11月16日)に言及した。