肩にある弧状の傷跡を指でたどりながら、私はなぜこのU字型の溝ができたのかを考える。取りつかれたようにベイルートの爆発の映像を見ては、砕け散るガラス、バラバラに壊れた木片、とがった石の山に私たちがのみ込まれた経緯を振り返ろうとする。いまだに時折、衝撃波のエネルギーが背後に放出されるのを感じることがある。飛び散るガラスの破片を浴びた4歳の娘イマンには、触るとまだ痛い傷跡がある。彼女は生涯この傷跡を抱えて生きていく。8月4日、わずか10秒で少なくとも死者180人、負傷者6000人を出した悲惨な爆発は、私たち家族の体に永遠に刻まれるのだ。私たちのアパートは破壊され、生活は一変した。世界の関心は別のところに移っても、妻と私はこの先どう進むべきかを決めなくてはならない。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の支局に赴任して1年足らずのベイルートに残るべきか、レバノンでの生活に一区切りつけるべきなのか?
ベイルート爆発、家族に残った深い傷 WSJ記者手記
幼い娘を連れてワシントンから赴任した判断は正しかったのか
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