被害事例のうち、不審者を取り押さえるなどして「解決済み」になったのは、わずか11%に過ぎないということである。これは裏を返せば、野菜泥棒というのは「成功確率90%の犯罪行為」ということになってしまうのだ。

 若いときに、取材で色々な違法行為をする人たちの話を聞く機会があったが、彼らに共通するのは、「どうやって捕まらないで悪事を働けるか」ということを、我々の想像以上に知恵を絞っているということだ。そのへんの若者を使って、いつでもトカゲの尻尾切りができる振り込み詐欺がなかなかなくならないのは、それが犯罪グループにとって、強盗や窃盗より「低リスク」で稼げる手法であるということが大きいのだ。

裏社会のカモにされ始めた
農家・畜産家の危機

 そう考えると、日本の農家、畜産家はかなり危うい。ご存知のように、日本の農業や畜産業を担う人たちの数は急速に減っていて、高齢化も進んでいる。広大な敷地をパトロールすると言っても、人手的にも体力的にも難しい。泥棒の現場を押さえることができても、見逃す可能性もある。実際、捕まる確率は10%程度だ。

 犯罪集団にとって農家・畜産家は、コンビニやタクシーや空き巣よりもはるかに安全に盗める場所になってしまっている。こんな狙い目な場所はない。つまり、日本の農家、畜産家が、高齢者をターゲットに振り込み詐欺をしているような裏社会の人たちの、次なるカモにされてしまっている恐れがあるのだ。

 近年になって地域の農協などが、監視カメラのようなセキュリティ機器をレンタルするなどの取り組みを始め、被害件数が減ったという話もあるが、そのような設備投資ができるような金銭的余裕のあるところばかりではない。また、北関東の家畜窃盗グループなど、監視カメラに映っても全く意に介さないという荒っぽいケースも目立つ。

 このような状態が続けば、「もうやっていられない」と廃業する農家・畜産家も出てくるだろう。農業などに可能性を見出している若者たちも、「ワリに合わない」と足が遠のく。日本の「食」を守るという意味でも、警備会社などのプロの見回りやドローン警備など、農家・畜産家が手厚いセキュリティを実施するための国のバックアップが、早急に求められる。

 目下、新総理の大本命と言われる菅義偉・官房長官は、秋田の農家出身という過去の総理にはないバックボーンを持っている。農家の辛さがわかるのなら、この卑劣な犯罪の対策にも、ぜひ国として本気で乗り出していただきたい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)