メディアには「女のカラダ」に関する都市伝説があふれています。
「あたためは生理痛にも妊活にも効く」「仕事をしすぎるとオス化する」「恋愛やセックスをしていないと女性ホルモンが枯渇する」……。これらはどれも、医学的には根拠のない情報。でも、それに振り回されて、不調のスパイラルに陥ったり、落ち込んだりする女性は少なくありません。
「女体」についての第一人者、産婦人科医の宋美玄先生が、いまの医学でわかっている「ほんとうのこと」だけをベースに20代~40代女性の、身体や性の悩みに答えた新刊「医者が教える女体大全」の中から、一部を抜粋して紹介いたします。

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男性ホルモンが増える病気はある

「オス化」「男性化」という言葉はとてもインパクトがありますね。仕事をしすぎた結果、ヒゲが生えたり、体毛が濃くなったり、ニキビが出たり、仕草がオジサンぽくなったり……といったことを指しているようで、女性向けのメディアでは頻出しています。まるで女性の身体のまま仕事をつづけるのは不自然である、といっているようです。私はこの言葉を見聞きするたび、女性が働くということが日本ではまだ”当たり前”ではないのだなぁと感じます。

 仕事をしていてもいなくても、女性の身体は男性ホルモンを分泌しています。男性も女性ホルモンを分泌しています。ただし、その量には大きな個人差があります。

 男性ホルモンのひとつ、テストステロンには、筋肉や骨を発達させる、性欲を司(つかさど)るなどの働きがあります。また、積極性や攻撃性とも関わりがあるといわれています。仕事を精力的にこなす、たくさんお金を稼ぐ、上のキャリアを目指すという、攻めの姿勢が”男性的”とされているので、女性も同じようにふるまうとオス化すると考えられているのでしょう。女性ホルモンは自分の意志で増えたり減ったりしませんが、男性ホルモンも同様です。女性が仕事をがんばったところで男性ホルモンは増えませんし、男性が仕事をさぼっても減りません。残業つづきや休日返上で仕事をしていると、誰でも生活に余裕がなくなります。産毛(うぶげ)を処理しなかったり、つい行動が雑になるのは仕方のないこと。オス化しているわけではありません。

ヒゲがはえる場所のニキビは、男性ホルモンの影響

 男性ホルモンの分泌量が過剰になる状態は存在しますが、仕事が原因ではありません。男性ホルモンが過剰になり正常な排卵が起きにくくなる「多嚢胞性卵巣症候群」という病気はあります。この病気に関しては、「医者が教える女体大全」でも解説していますが、オス化を嘆くのではなく、治療しましょう。

 ただ男性ホルモンが容姿にまったく無関係ということはなく、ニキビが出やすくなることはあります。ニキビとは分泌された皮脂が毛穴に詰まって発生するものですが、大人の場合、男性ホルモンが関係しているものもあります。ストレスや体調の変化によってホルモンの分泌量が乱れ、男性ホルモンの影響を受けやすくなると、それによって皮脂の量が多くなるのです。口周り、男性でいうとヒゲが生える場所のニキビがそれに当たります。肌を清潔にしても、ニキビ対策用のスキンケア用品を使っても、こうしたニキビにはあまり効果がありません。皮膚科での診療やピルの服用が有効です。