nVidiaの買収グループの中核だったアーム株を売却する孫正義・ソフトバンクグループ会長兼社長(左)と、アームを買収してAI半導体の覇権を狙うエヌビディアのジェンスン・ファンCEO Photo:Bloomberg/gettyimages

ソフトバンクグループが傘下の英半導体設計会社アームを手放す。スマートフォン用半導体の影の支配者を買収するのは、人工知能(AI)用半導体で覇権を狙う米エヌビディア。孫正義氏は、半導体の強者連合との関係を良好に維持しながら、AI戦略を立て直すことができるのか。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

思い焦がれてやっと買収した
アームをあっさり手放す孫氏

「今から5年後、10年後、20年後に、ソフトバンクの本業はアームだと多くの人が思うようになっていたい」――。

 2016年7月、孫正義・ソフトバンクグループ(SBG)会長兼社長は、3.3兆円で買収合意したばかりの英国企業をグループに迎えることに興奮していた。

 当時の孫氏にとってアームは「10年以上前から買いたいと思い続けていた」ほどほれ込んだ企業。買収が決定した日は「人生最高の日」と喜びを隠さなかった。

 その孫氏が表明したグループの将来像が「地球上にばらまかれたアームのチップを通信でつなげ、データというソフトをクラウドにバンク(収納)する総合的なプラットフォーム企業」だ。

 さらに「ソフトバンクの社名の元になっている姿に近づきつつある」とも述べて、半導体業界に進出する狙いを分かりやすく表現した。

 孫氏は、あらゆるモノがインターネットに接続されるIoTの時代を見据え、スマートフォン用半導体の9割のシェアを押さえるアームが「いずれソフトバンクの中核になる」と本気で考えていた。

 だが、それから4年。そこまで思い入れのあった企業を孫氏が一転して手放すのはなぜか。