わずか1年前にソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は絶頂だった。10兆円ファンドの好成績の勢いに乗って、さらに10兆円の資金を集めて「2号ファンド」を立ち上げると表明。だが、そこから暗転したのは速かった。『ソフトバンク巨額赤字の惨禍』(全6回)の#4では、ウーバー上場低迷、ウィーワーク騒動を経て、コロナの危機に突き落とされるまでの軌跡を振り返る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
2号ファンド設立を急いだ裏に
ユニコーンバブルの懸念
「ソフトバンク・ビジョン・ファンドの1は非常にうまく行った。そこでファンド2の設立準備に入る」
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長が10兆円ファンドの2号の設立を宣言したのは、昨年5月の2019年3月期の決算発表の場でのことだった。ビジョン・ファンドの年間の営業利益が1.2兆円に達し、連結当期純利益は3年連続で1兆円を超えた。孫氏の自信はピークに達していた。
17年5月にビジョン・ファンドの運用が始まってからわずか2年。早くも、投資枠の上限に近づいていたため、資金が枯渇する前に次の資金を用意するのが狙いだった。ファンドを20兆円規模に拡大することで「AI(人工知能)を活用する世界中のユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)を総取りする」――。そのために孫氏は、手を緩めるつもりはなかった。