アップルの時価総額は、本稿執筆時点で6200億ドル台で、日本円にしてざっと50兆円だ。

 同社のビジネスは立派だ。商品ラインアップを絞り込み、形は違っても中身の似たものを大量に作り(失礼!)、高い粗利率を確保する。コモディティ(大量生産・大量販売品)化が進んだ分野にあって、特許に加えて、デザイン、ビジネスモデルを含めた差別化を成立させ、これを過去から引き継いだ「ただのコモディティではない」というブランドイメージと上手に結び付けている。また、製造の大半を効率的に外注する一方、販売面では直販を増やして顧客と直接結び付くと同時に利益を確保し、相応の価格のコントロール力を持つ。日本の家電メーカーにも多くの教訓がありそうだ。

 さて、問題は、アップルのような会社の株式と投資家はどう付き合うかだ。立派な経営をしているのだから同社の株式を買いたいと思うか、あるいは、既に評価されている銘柄だから買いたくないと思うか、読者はいずれだろうか。

 筆者の好みを言うと、プロとして運用するのであっても、自分のお金を運用するのであっても、アップルのような銘柄とは、「深くは関わらないでいたい」。

 プロの場合、ベンチマーク(比較の対象となる指標)に占めるアップルの比率と自分のアップル株への投資比率の大小が問題になる。仮に、筆者が、米国株ファンドの運用者をしているなら、アップル株は「中立よりもややアンダーウエート気味」に扱うだろう。個人の株式投資なら「持たない」。

 最大の理由は、ビジネスの上でも人気の上でも、「上がり目」(現在と比較してポジティブな変化)が小さいだろうと思うからだ。次世代のiPhoneが素晴らしく、サムスン電子との訴訟合戦でさらに勝ったとすると、株価は上昇するだろうが、そこでこれらを超えるポジティブな変化が続く可能性は「想像しにくい」(絶対にないとは言えないが)。また、ケインズのように株式投資を美人投票と考えた場合、現在人気の「超美人」が、「超々美人」に変化する可能性に賭けるよりも、「美人ではあっても人気は上げ止まり」あるいは「将来小さなキズが見つかる」という可能性に賭けるほうが、割がいいような気がするからだ。