厳しい言い方だが、GoToトラベルがあってもなくても、今の低価格帯ホテルやビジネスホテルが陥っている苦境はそれほど変わらないのだ。このような業界にバラまきをしても、事態は改善しない。もし政府が何かしらの対策に乗り出すのなら、「多すぎるビジネスホテル」という構造的な問題を解決する手助けをすべきだ。

外国人観光客が戻ってきても
ホテル選びの基準は大きく変わる

 と聞くと、「いやいや、今は確かにビジネスホテルは苦境だが、インバウンドが本格再開すれば、五輪や万博もあるから、また外国人観光客がわんさかと訪れるようになるさ」と楽観的な考えの方もいらっしゃるかもしれない。もちろん、全国のビジネスホテルで働く人たちのためにも、そうなってもらいたい。

 が、ユーザー目線にたてば、それはあまりにご都合主義的なシナリオだ。仮に海外渡航が解禁されて、ワッと中国人観光客が押しかけたとしても、彼らの行動やホテル選びの基準は、コロナ以前とは大きく異なってくるはずだからだ。

 たとえば今、中国国内では「無人スマートホテル」が注目を集めている、予約はネットで行い、スマホを使った無人チェックインで、部屋の施錠や料理の注文などもすべてスマホで行い、従業員とまったく顔を合わせないようなホテルだ。今回のコロナ禍を機に、このような「非接触サービス」の普及が加速しているのだ。

 日本人は何かと中国を「下」に見ることが多いが、電子決済の普及率などでもわかるように、実はこの手のITテクノロジーの活用ということで言えば、「ようやくデジタル庁ができます」と大騒ぎする日本より、はるかに進んでいる。それは裏を返せば、海外渡航の解禁後にやってくる中国人観光客にとって、これまで宿泊していた1泊5000〜7000円(朝食付き)のような一般的なビジネスホテルは、「時代遅れ」という印象を受けてしまうということだ。

 もちろん、アパホテルのように資金力のあるチェーンホテルはそのあたりもよくわかっているので、無人チェックインを導入するなど、低価格と最新技術の両立を進めている。しかし今回、GoToの恩恵を受けることなく閑古鳥が鳴いているようなビジネスホテルは、「時代の変化」についていけないのではないか。

 それに加えて、筆者がそのようなホテルの先行きを不安視する最大の理由は、昨日発足した菅新内閣だ。ご存知の方も多いだろうが、菅氏は現在の日本の観光戦略の旗振り役である。そんな「観光の菅」が肝入りで進めていたのが、「高級ホテル路線」だ。