海外のアベノミクス期待は剥落
菅首相に対する評価に注目
7年8カ月の長期政権となった安倍政権が幕を閉じ、菅義偉氏が16日の臨時国会で新しい首相に選出された。
安倍前首相の突然の辞任が報じられた8月28日に、日経平均株価はザラ場高値から800円近く下げ、ドル円は1円を上回る円高となった。しかし、その後の日経平均株価とドル円は、安倍首相の辞任報道前の水準に戻った。安倍前首相の辞任報道から1週間後となる9月4日の日経平均株価は2万3205円、ドル円は106円台と、首相辞任報道前の8月27日と変わらない水準だ。
これは、安倍前首相の政策を継続する方針を掲げた菅氏が、次期首相の有力候補になったためだ。首相交代でも、財政政策と金融政策の大幅な変更はないとの見方が市場に多いため、株式・為替市場が落ち着いているとも解釈できる。
しかし、菅首相が株高・円安をもたらしたとされるアベノミクスとの継続性を維持するだけでは、日本株市場が安定するとはいえない。海外投資家は、2018年にアベノミクスで日本株が上昇するとの期待を完全に捨て去ったとみられるからだ。海外投資家はこの年、現物と先物を合わせて日本株を13兆円超も売り越した。
長期的には、日本株は海外投資家の売買動向と連動しやすいため、日本株の行方を占う上で、海外投資家の菅首相への評価が重要となる。海外投資家が菅首相を評価すれば、海外投資家のマネーは日本の株式市場に流れるだろう。
海外投資家が菅首相を評価するポイントは、(1)長期安定政権か、(2)経済重視の姿勢に戻るか、(3)財政を拡大し続けるか、の3点と考えられる。以下では、各点における今後の行方を考えてみたい。