小麦と貿易
人間の主食である小麦が不作になった場合、政治的なイベントリスクが顕在化する可能性がある Photo:123RF

小麦需給の動向に
注目すべき理由

 8月から上昇を続けてきた小麦価格は足元調整している。しかし今年後半から来年にかけて再び上昇する可能性もあり、世界経済への影響が懸念される。小麦の需給の仕組みと今後の価格上昇リスクについて解説する。

 そもそも、なぜ小麦を取り上げるのか。

 穀物を議論する場合、トウモロコシ、大豆、小麦(以下主要3穀物とする)が対象になる。日本ではコメが主食だが、国際市場で見ると需要に占める輸出のシェアは8.9%(米農務省2020~2021穀物年度見通し)にすぎない。トウモロコシの15.8%、大豆の44.6%、小麦の24.5%と比べて低く、地産地消の傾向が強いため、国際市場ではコメよりも主要3穀物の方が注目されやすいのだ。

 農産品は基本的には人間か動物が食するために用いられるが、トウモロコシや大豆は工業品としても用いられている。特に日本では食用のイメージが強いトウモロコシは飼料用とエタノールなどの工業用需要のシェアが大きい。

 国連食糧農業機関(FAO)と米農務省の2017年のデータを基にすると、小麦の食用向け需要の総需要に占める比率は65%、トウモロコシは13%、大豆は10%(大豆油に加工されるものを除けば3%※1)程度となっており、圧倒的に小麦は人間の食用に供される比率が高い。

※1 大豆は圧搾して大豆ミールと大豆油に加工され、1ブッシェル(27.2キロ)の大豆から5キロの大豆油、20キロの大豆ミールが生産される。大豆油は45%が食用に供され、大豆ミールはほとんどが飼料に用いられている。