中国の決済業界に革命をもたらしたフィンテック大手アント・グループは、人々を携帯電話から切り離すことがいかに難しいかを思い知らされつつある。中国の富豪、馬雲(ジャック・マー)氏が支配権を握るアントは3年前、野心的でコストのかかる取り組みに乗り出した。小売店に顔認証端末を設置し、スマートフォンを使用しなくても、画面にほほ笑みかけるだけで支払いを済ませられるようにするプロジェクトだ。アントのモバイル決済サービス「支付宝(アリペイ)」は2019年4月、最大30億元(約465億円)を投じ、ネットワーク加盟店への補助金や買い物客への還元サービスを通じて顔認証端末の導入を推進すると明らかにした。テンセントホールディングスが運営する競合サービス「微信支付(ウィーチャットペイ)」も、この分野で事業を拡大してきた。