新しいテクノロジーをベースに、過去の常識にとらわれない発想によって新規ビジネス、新規サービスを開発することで成長を遂げてきたニュー・インダストリーにとって、旧弊な採用手法にとらわれる理由はありません。長期のインターンシップを実施する企業や、インターンシップでの成績で数年間有効の入社ライセンスを付与する企業など、産業界も一部ではありますが、確実に変わり始めています。
「インターンシップの対象を高校生にまで広げた企業や、高校生や高専生にバイトをさせるIT企業も出てきました。学生のほうも意識差は大きく、いまは高校を出て働いて、大学には入らずに大学院に入る学生も登場しています」
このような新しい現実に目を向けることなく、旧態依然とした採用を続けている限り、「優秀な人材が採れないなあ」という企業人の嘆きは終わらないのかもしれません。そして、「職場で人が育たない」という事態は、「育つ人材を採る」という発想に変わらない以上、こちらも続いていくのでしょう。
60%の“ほどほど人材”を
上位20%に成長させる方法
佐藤さんは「優秀人材の出現率は5%」と指摘します。この選りすぐりの学生を採用しようと、企業人事は必死の努力をしているわけですが、そもそも数が少ないので、フツーの企業には採用は困難です。さらに言えば、このような優秀人材はコンサバティブな企業風土には、往々にして馴染むことはできません。争奪戦を勝ち抜いて入社させたとしても、ミスマッチによる「3年3割」候補である可能性は高いでしょう。
考えるべきは、2・6・2のまんなかの6を、上の2に成長させることではないでしょうか。それにはどうすればいいのか、佐藤さんの答えは明快です。
「なんらかのプロジェクトを任せること。これがいちばんいいやり方でしょう。いきなり米国に放り出して“支社を作ってこい!”という時代ではありません。かつては手っ取り早く一人前にするための有効な方法だった“厳しい営業”も、営業自体がかつてほどダイナミックではなくなった現状では、難しい。若手を主体に人事制度を構築させるとか、エコロジー施策を立てさせるとか、社内外へのバリューを出して評価する、というようなことが、比較的短期に能力アップさせるでしょう」
このように、会社にできることもありますが、限界もあります。佐藤さんの本のサブタイトルは、「会社に頼れない時代の仕事選び」。会社の側も、一生頼られることを保証できない以上、個人が成長するために社内外を問わないネットワークを作ることが有効でしょうし、それが会社への利益をもたらす局面も必ず出てきます。