組織内部の昇進の仕組みも、評価の仕組みも、人材育成の仕組みも、会社の中身はそっくり変わってしまったのに、その「入口」であるところの採用の部分だけ従来と同じやり方を続けられるはずがない。にも関わらず、いまだに同じパターンが続いている。これでは、ミスマッチが起きて当然です」
大学3年では遅い?
早い時期から社会との接点を
このような現状認識をふまえて、佐藤さんは「遅くても、大学に入ったときから就活をしよう」と提唱します。なにも学業そっちのけで会社訪問をせよ、というのではありません。社会との接点を持つことで、自分の志望を意識化、明確化しようということです。
「いまの就活=採用の慣行でいくと、大学3年生の秋になって、初めて“よのなか”のことを考え始めて、企業の情報を集めたりする。ある時点で急に始まる“しんどいこと”というのが多くの学生のとらえ方でしょう。その“苦行”に入る前は、とにかく遊ぶ時間。大学に入って楽勝科目を取り、効率のいいバイトをして、サークル活動を楽しむ。社会に対して閉ざされた状況で、ぐるぐる回っているだけ、という学生があまりに多い。
単純に自由を謳歌するのではなく、非効率かもしれないけれど世代の異なる人たちにもまれるようなバイトをするとか、長期のインターンシップに参加するとか、社会と接点を持った活動をしてみるのは役に立ちます。自己分析をしたり、エントリーシートを書いたりという、いわゆる就活準備の前段階の経験と学びによって人間としての力を高めることが必要だと思うのです。“こういう分野でがんばりたい”と考えるようになるきっかけが、少しでも早い時期に持てると、いい就職ができるでしょうし、どこに行っても成長のポテンシャルが生まれるのではないでしょうか」
学生に問いかける一方で、佐藤さんは企業の採用手法にも提言します。
「企業が学生と早い段階で接触したりすると、すぐに“青田刈りだ”などと言われてしまうが、学生とオトナがコミュニケーションする機会を増やしていくことが望ましい。業界のこと、自社のことを知ってもらう”という意味でのコンタクトの機会を1年生2年生にも提供するべきでしょう。両者の接点が少なく、ギャップが大きいためにミスマッチが生まれているからです。また、学生に対して、オトナ目線での厳しいフィードバックをすることを積極的にしていくべきです。」
企業が暗黙の前提にしている「新卒一括採用」は、それが社会的にも効率的な採用手法であるために、いまも支持する向きは少なくありません。しかし、ITベンチャーを筆頭に、ばらつきが目立つようにもなっています。