スキルとして、広義のデジタル化に関わる技術や知識を持っていることも有効だろうし、顧客向けのサービスを開発・改善する上で必要な専門知識を有していることも評価されるかもしれない。ただ、「経営統合後の競争的環境」にあって最も確実で有効なのは、自分が確かな「顧客」を持っていることのはずだ。

 個人客であれ、法人客であれ、先方と強い信頼関係を結び、取引を行う上で「自分」が不可欠になるような関係を作り、かつ維持するべきだ。他社に自分が転職する場合に、「自分に付いてきてくれる」くらいの顧客をどれだけの数と金額的サイズで持てるかが勝負所だ。

 大切な顧客は、簡単に後輩や上司に渡してはいけない。ゲームのルールを理解しない行員が、上司に顧客を取られるようなケースが頻発しそうな悪い予感がする。「地銀の半沢直樹」は、ドラマで北大路欣也氏が演じた中野渡謙頭取の「顧客第一」という台詞を、自分のキャリアを守るための金言としても胸に刻むべきだ。

 もちろん、新しい銀行で業務をすっかり作り変えながら、顧客と共に栄えていくのが望ましい将来像の一つだ。とはいえ、これからの金融マンは、転職や独立も選択肢として絶えず比較対象にしながら働くべきだろう。

 以前にこの連載の記事『「半沢直樹」が銀行でするべき、正しい行いとは』でも書いたが、筆者個人としては、ドラマの半沢直樹には、銀行に残るのではなくて、独立してコンサルタントになってほしかった。彼の能力があれば、その方が顧客のために働けるのではないだろうか。

 銀行のオフィスや名前、諸々の装置にとらわれることなく、良心的で優れた金融マンが個人の単位で顧客に良いサービスを提供できる――。そんな金融マンの時代が早く来ることを願っている。