ヘビににらまれたカエル――。9月16日に誕生した菅義偉新首相が、地銀再編の必要性に言及した。青森県の2行の統合観測が政権発足前に流れ、他の各行も浮足立つ。特集『地方エリートの没落 地銀・地方紙・百貨店』(全13回)の#1では、地方の“殿様”として君臨してきた頭取たちに、再編が迫る様子をレポートする。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
「再編も一つの選択肢になる」
菅首相の発言で地銀が震撼
「まるであの人が書いた文章のようだ」――。自民党総裁選挙のさなか、「(地銀の)数が多過ぎる」「再編も一つの選択肢になる」と言い放った菅義偉新首相のスピーチを聞いて、地方銀行関係者はある人物を想起していた。
その人物の名は、森信親元金融庁長官。森氏は検査局長時代、多くの地銀が本業赤字に転落するという衝撃的な将来予想図を打ち出した通称「森ペーパー」で、地銀業界の再編機運の火を付けた人物だ。通例では任期2年のところ、2015年7月から3年間長官を務め、金融行政で数々の実績を残したため、史上最強長官ともうたわれる。