文系のなかには、理系コンプレックスを抱えている人は少なくありません。しかし、「読書においては文系がまさっている」と、この本に出合うまではそう思っていました。しかし……。新刊『理系読書 読書効率を最大化する超合理的サイクル』は、理系が実践している合理的な方法を読書に応用した技術です。著者は、東大生500人以上、医大生を2000人以上輩出した元駿台予備学校ナンバーワン化学講師で、バリバリの理系。本をまるで理科の実験のように扱い、最短最速でスキルハントする。インプットとアウトプットが速すぎて、これにはもうお手上げです。「速く読むこと」や「大量に覚えること」を目的とする読書術とは、一線を画した内容。最短最速で著者の経験知やノウハウを自分の頭にインストールし、自分の問題解決に役立てる至極の読書術です。
集中力が続くのは15分。
だから1冊15分で読む
本を読むうえで大切なことは、いかに合理的に読むかです。
最初から最後まで全部読んで「読み終わった」という達成感を得たとしても、そこから得られた情報を使いこなせていなければ合理的とはいえません。その反対に、数ページ読んだだけでも、自分自身の問題解決やスキルアップにつなげられたら、合理的な読み方といえます。
そんな合理的な読書を追求してきた私は、1冊の本をおおむね15分くらいの時間で読了できるようになりました。
本の内容に没頭して15分以上読んでしまうこともありますが、それでもせいぜい30分。1時間も2時間も読むことはありませんし、むしろ最初から最後まで読まないと必要な情報が引っ張り出せなかったときは、「あ~、非効率な読み方しちゃった」と落ち込むほどです。たくさんの情報に長時間触れたのにもかかわらず、自分にとって必要な情報がほとんど得られなかったときは、たとえ1冊丸ごと読み切っても、時間がもったいなかったと思ってしまうのです。
なぜ15分か。それは予備校講師時代に、まとまった読書時間を取れず、電車移動の時間やスポーツジムでエアロバイクに乗っているときなど15分程度なら集中して読書しやすかったから、という個人的な事情が理由の一つです。
ただ、後日知ったのですが、15分で区切るのは合理的な方法でした。
15分で1冊読み切れなかったとしても、15分1セットの読書を数回繰り返すほうが、一度に長時間読み続けるよりも読書の内容を記憶しやすくなるからです。このことは、東京大学薬学部教授の池谷裕二教授が発表した「”長時間学習”よりも短時間集中の”積み上げ型学習”が有効であった」(*1)という研究結果と合致します。
社会人は忙しい毎日を送っているので、本を読むのにかける時間を細切れにして積み重ねたほうがいいのです。15分単位で1冊読み切って、すぐさま問題解決につなげることができれば、コストパフォーマンスの高い読書といえます。
ここで重要なのは、15分で本を読み切ることではなく、問題解決というリターンを得ることです。
*1 学習時間を細かく分けた「45分」で「60分」と同等以上の学習効果を発揮」株式会社ベネッセコーポレーション進研ゼミ中学講座調べ