文系のなかには、理系コンプレックスを抱えている人は少なくありません。しかし、「読書においては文系がまさっている」と、この本に出合うまではそう思っていました。しかし……。新刊『理系読書 読書効率を最大化する超合理的サイクル』は、理系が実践している合理的な方法を読書に応用した技術です。著者は、東大生500人以上、医大生を2000人以上輩出した元駿台予備学校ナンバーワン化学講師で、バリバリの理系。本をまるで理科の実験のように扱い、最短最速でスキルハントする。インプットとアウトプットが速すぎて、これにはもうお手上げです。「速く読むこと」や「大量に覚えること」を目的とする読書術とは、一線を画した内容。最短最速で著者の経験知やノウハウを自分の頭にインストールし、自分の問題解決に役立てる至極の読書術です。
本を読むことが問題解決につながる喜びとなる
なぜ、理系の学生は多くの難解な本を読めるようになるのか。それは、「必要に迫られたから」「やらなきゃ進級できないから」だけではありません。
おそらく、「本を読むことが問題解決につながる喜び」を日々、実感できているからです。
理系の学生が与えられる課題の答えは、簡単には見つかりません。どの本にも書かれていない答えを導くために、たくさんの本を読み、文脈を理解して、エッセンスを抽出し、それらをいくつもつなぎ合わせることで、自分なりの答えを導き出す必要があります。
複数の本に書いてある知識を組み合わせることで、ようやく問題解決につながるのです。
ロールプレイングゲームでたとえると、剣や盾など何種類もの武器を身につけることで、あっという間にボスを倒すことができる……そんな状況と似ているかもしれません。より強いボスを次々と倒していくたびに、ステージをクリアしていく快感を得られるからこそ、いろいろな種類の武器を身につけたくなる―私にとっての読書はそんな感覚でした。
私は読書の持つそうした効能に、大学生、そして社会人生活を通して気づき、衝撃を受けました。
それまでは、1冊の本を隅から隅までじっくり読むことが、問題解決につながる本の読み方だと思っていたからです。
しかし、それは本当の意味で問題解決につながる読書とはいえません。
自分に降りかかる悩みや世の中の問題は非常に複雑かつ個別具体的で、1冊の本で明確な答えを示せるものではないからです。1冊の本の内容だけで解決策を無理やり導き出そうとすると、非効率になることもあるのです。
ではどうすればいいのか。「多様なジャンルの本を読むこと」です。
多くの本から必要な箇所だけを速やかに読み取り、そこで得た情報を現実世界で活用することが、合理的な問題解決方法となります。
時には複数の本に、同じ内容が書かれていることもあります。それを、「何だ、あの本と同じことが書いてあるな」とネガティブに捉える必要はありません。複数の本に書いてある内容は、重要な事実であったり、多くの人の常識だったりする可能性が高いからです。
それが確認できただけでも、読書の成果は得られたといえます。