Too Little, Too Late
僕もヘッドハンティングで転職したのだが、「最初の会社にお世話になったし、上司や同僚にも悪い、それにそんな形で会社を裏切るなんてことはできない」などとヘッドハンターに話していた。「来年は昇進してもっと給料が上がりそうだ」とも話した。それで、そのヘッドハンターと何度目かに飲みに行ったとき、彼の言葉が僕の転職を決意させた。
「藤沢さん、いいかげんにしろ。君の会社が今までに君に払ってきた金が、まぎれもない会社の君に対する評価なんだ。君はプロフェッショナルなんだぞ。これからだって君を評価してもっと支払ってくれるかなんてわからないよ。トゥーリトル、トゥーレイト(Too Little, Too Late)なんだよ!」
そうだ。会社が僕に今まで支払ってきた金はとてもじゃないが安すぎたし(Too Little)、これからもっと支払ってくれるといったところですでに遅すぎだ(Too Late)。僕はこうして3年目にして自分を一から育ててくれた最初の会社を裏切り、年収がほぼ2倍というオファーを受けてライバル会社に転職した。
純朴だった大学の研究者が、こうやって金の亡者へと変わっていった。
そして、実際に僕はうなるような金を手にして、欲しい物はなんでも金の力で手に入れてきた。任天堂のWii、シャープの薄型テレビ、最新のiPhone、キヤノンの一眼レフデジカメ、マルチモニターのデルのパソコン、洗練された北欧のデザインが美しいイケアのデスクにベッド、そして1台10万円は下らないカーボンフレームの自転車など、だ。ラーメン屋に入っても、躊躇なく一番高いチャーシュー麺を注文するようになった。
<第2回は明日25日に公開予定です。>
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