「今年4~6月の居抜き物件の譲渡希望店舗数は過去に例を見ないほど多数ありました。7月以降、営業は再開されましたが都心のオフィス街を中心に客足の戻りは悪く、収益化の見通しが立たない店舗をさらに取捨選択しながら第2段階として、現在も居抜きの譲渡案件が出ている状況です」

 このような状況は借り手も同様であり、4~6月は借り手の申し込みも例年以下であったという。ただ、現在は徐々に回復傾向にある。

「特に資金調達が可能な中小規模の飲食企業は、コロナが収まったら客足を見込めるような、良い物件を積極的に検索・獲得している傾向にあります。小規模事業者を中心に少しずつ動き始めてきています」

好立地という定義の変化
変容する居抜き物件の価値

 細川氏が在籍するシンクロ・フードでは、居抜き物件への借り手からの問い合わせが、9月には例年並みに回復しているという。しかし、コロナ以前と比べると明らかにその傾向は変わっている。

「好立地の定義が変わってきています。以前は東京23区や山の手線内が人気でしたが、今は郊外を好む事業者が増えています。テレワークが推進されたことによるオフィス街での集客力の落ち込みで、高い賃料を賄えるだけの売り上げが望めないという判断があります」

 また、事業者の業種にも変化が起きているという。

「業種では、うどん、そば、ラーメン、焼き肉といった日常食業態が増加傾向です。コロナによってテークアウト需要が高まったことで、店内で売り上げを完結させるだけではなく、店外でも売り上げを伸ばそうという傾向が飲食業界では高まっています。そのため、テークアウトをしやすい日常食が好まれ、居抜き物件もテークアウトに適した物件が人気です」

 立地や業種も、これまでの「オフィス街居酒屋」とは正反対の方向性といえるだろう。そのためデリバリーやテークアウトの販売を複合的に活用し、「店内売り上げを○割、店外売り上げを○割」といった目標値を設定する経営者も多くなっているという。

「また、目玉のスイーツ、パンなどのキラーコンテンツを持つ飲食店がECなどを活用し店舗外収益の獲得に注力するケースもありますね。それに適応できる業態かどうか、立地はどうか、居抜きの状態かどうかが判断基準として着眼されており、これまでとは判断基準が変化してきている印象です」

 このような借り手の問い合わせは「感染者の減少とともに、徐々に増加してくるだろう」(細川氏)という見込みだ。