トヨタとの関わりについては、同社が掲げる「100年に一度の自動車産業変革期」に対する強い危機感において、改めて地域に寄り添ったサービスの実現として「町いちばん」を提唱している。その中で、トヨタのモットーである現地現物として自家用有償旅客運送の活用を町に対してご提案頂き、実施に際し福井県トヨタ販売各社との連携が実現した。

利用する高齢者の乗降の様子利用する高齢者の乗降の様子 写真提供:永平寺町

 さらに、日本郵便本社幹部に来町いただき、郵便事業の新たなる可能性として自家用有償旅客運送を活用した、郵便物と人との移動の共存である貨客混載(または客貨混載)について議論してきた。

 このようなさまざまな連携をもとに、2019年度および2020年度の経済産業省MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)支援事業として申請し、近助タクシーの実用化を目指してきた。

 むろん、ここまですべてが順調に進んできたわけではない。

 技術の採用案件や、法的な解釈への対応など…、いろいろあった。それでも、志比北地区と永平寺町役場職員を中心とする関係者の皆さんは何事も諦めず、課題解決に向けて真正面から取り組んでくださった。

実際携わって感じた
「気付き」

 財政面で見ると、公共交通に対する永平寺町の負担金は、えちぜん鉄道など地域鉄道へ4000万円、京福バスなど路線バスに900万円、さらにコミュニティバスには4620万円だ(平成30年度資料)。合計額で一般会計に占める割合は約1%である。

 コミュニティバスの賃金は、1乗車あたり大人100円、小中学生50円。また、60歳以上の方、障害者の方、介護する方は無料なのだが、それでも近年は「空バス」が増えていった。

 こうした中で、町として財政健全化の観点から、コミュニティバスの再編を考えるのは自然な流れだ。

近助タクシーの拠点となっている、地区センターで、永平寺町MaaS会議のフィールドワークを行った様子。町の職員が詳細を説明近助タクシーの拠点となっている、地区センターで、永平寺町MaaS会議のフィールドワークを行った様子。町の職員が詳細を説明 Photo by K.M.

 一方、住民の一部から、町民全員が納税している中で公共交通の公平性が守られない可能性があるとの指摘もある。

 また、町内各地域で少子高齢化が進む中で今後は「自助・共助・公助」の観点で、「自分たちの地域は、自分たちの手で守っていこう」という気持ちが芽生えているのも事実だ。

 町として各方面からの意見をしっかり聞きながら、各種案件について判断してきた。

 そうした中、筆者として驚いたのは、試走を進めるうちにドライバーの皆さんから町との意見交換の中で「どうすればより良いサービスができるのか」という視点での積極的な発言が増えていったことだ。