このエネルギーが、今のメディアには欠けています。いや、日本人全体が物分かりのいい 国民になってしまったあげく、どんよりした、閉塞感に満ちた国になってしまったような気がします。

 さて、2010年のことです。文藝春秋の編集長だった私のところに、驚くべき人物が立花さんとの面会を求めてきました。その人の名は佐藤あつ子。

『田中角栄研究』には、立花さんの『金脈研究』と共に、ジャーナリスト児玉隆也さんによる「越山会の寂しき女王」という特集が掲載されていました。田中角栄の愛人、佐藤昭に焦点をあてた記事で、佐藤あつ子さんは佐藤昭の娘です。

 娘・佐藤あつ子さんの人生は金脈報道によって翻弄されました。恋愛問題で自殺未遂を図ったといった報道もありました。面会を求められた立花さんも困惑しています。

田中角栄の娘と立花隆の対面
号泣のあとに……

 メディアの人間が抱える最大の悩みに、立花さんも直面したのです。どんなに正しい報道をしても、誰かが傷つきます。ましてや、その家族には何の責任もないのに、人生が変わってしまいます。その責任は我々にはとれません。その年の暮れ、立花さんと佐藤あつ子さんは、文春の会議室で会うことになりました。

 立花さんも緊張した面持ち。佐藤あつ子さんは、顔面蒼白です。そして、話が始まろうとしたとき、佐藤さんが号泣し始めました。1時間以上、落ち着くまで待ったでしょうか。

「今年(2010年)に母が亡くなり、それを機会に立花先生にお会いしたいと思ったのです。私が立花さんのことを『親父の仇』と思っていると、私の周囲が感じているので、そのままにしたくないと思ったのです」(あつ子さん)