セクハラ
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 世界的な「#MeToo運動」をきっかけに、職場でのセクシュアルハラスメント(セクハラ)が問題視され始めた。

「親愛の表現なのに騒ぎ過ぎ」と頭と行動を切り替えられない人も多いだろう。しかし、職場でのセクハラは社会問題化した「アスベスト暴露」に匹敵する死亡リスクかもしれないのだ。

 スウェーデン・ストックホルム大学の研究グループは、同国の「労働環境調査」(1995~2013年)でアンケートに回答した有給の労働者、男女8万6451人を平均13年間追跡。セクハラ経験と自殺および自殺企図・未遂との関連を解析した。

 セクハラを性に関連づけた望ましくない言動と定義し、職場で(1)上司、同僚、(2)その他(患者や顧客、乗客、生徒など)からのセクハラを過去12カ月間で「全くなかった」~「毎日」の7段階にわけ自己申告してもらった。

 自殺および自殺企図・未遂に関しては、国が管理する個人識別番号から追跡期間中の死因、入院・外来通院の記録を確認、裏付けを取っている。

 解析結果である。過去12カ月の間に職場でセクハラを受けたのは男性1.9%、女性7.5%だった。被害者は男女とも年齢が若く、特に女性は低収入で負荷が大きい仕事に就き、独身もしくは離婚、別居中の割合が高い。一方、男性はセクハラ以外に「いじめ」や「暴力」「暴力による脅し」を経験している人が多かった。

 追跡期間中の自殺は125例(0.1%)、自殺企図・未遂は816例(1%)だった。このうち、セクハラ被害者4095人中の自殺者は11人、非被害者8万1110人中の自殺者は114人だった。統計的に解析すると、セクハラ被害者の自殺リスクは非被害者の2.82倍、およそ3倍にもなった。また自殺企図・未遂のリスクは、同じく1.59倍だった。

 従来、「セクハラ暴露」は心身の健康リスクだと知られていたが、自殺との関係が明らかになったのは初めてのことだ。安全な職場を目指すなら、セクハラは男女を問わず、致命的なリスクになると認識すべきだろう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)