トランプ大統領も罹患!
選挙戦で初めて政権が揺れた

 ここで、全米をノックアウトした新型コロナウイルスの感染状況を見ておこう。この原稿を書いている20年10月13日現在、米国の感染者数は累計で794万人、死者数は21万6000人に上っている。

 州別に見ると、長らくニューヨーク州が感染者数では一番だったものの、現在は48万3000人と4番目に下がってきた。代わりに伸びているカリフォルニア州(86万5000人)、テキサス州(84万4000人)、フロリダ州(76万2000人)がトップ3となっている。

 ニューヨーク州の死者数は3万3000人弱と、感染者数トップ3に入ったカリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州のどこと比べても、その2倍近くある。感染者数に占める致死率が約7%に達するなど、ニューヨーク州の異常さが際立っている点は、注意が必要だ。

 この間、ドナルド・トランプ大統領も10月2日に新型コロナウイルスへの罹患(りかん)が判明。翌10月3日の夕方には、ウォルター・リード・メディカル・センター(WRMC)に入院し、5日に退院した。この時が恐らく、今回の選挙期間を通じて、トランプ政権が初めて大きく揺れた瞬間だったといえる。

 病院に行くためにヘリに乗る大統領が、階段の手すりをポンポンと2度たたいたのは、自分が生きてホワイトハウスに帰ってくるためのおまじないだったともいわれる。その彼が完全に回復したと誰の目にも分かったのは、10月10日、新型コロナウイルス感染後初となる演説を実施した時だった。

 トランプ大統領の新型コロナウイルス罹患を巡って、見るべきポイントは2つあった。

 1つは、狂ったように大統領を非難していた民主党は、トランプ大統領の入院当初、彼を危篤状態だと報じたリベラルメディアとともに、病状の発表をしつこく要求していた。だが、その後は手のひらを返したように、トランプ大統領の詳細な病状説明を求めようとはしなくなったのである。

 これは、民主党のバイデン候補も脳神経系の病気を患っているとうわさされる中で、共和党側からトランプ大統領とバイデン候補の病状説明を取引条件にしようと言われるのを恐れたためだといわれている。これ以上民主党が騒げば、共和党もバイデン候補の脳神経系の病気について指摘するかもしれない――。そう警戒し、自粛した可能性が高いのだ。つまりそれくらい、民主党のバイデン候補にも身体的な懸念がある、というわけだ。

 もう1つは、高齢者の死亡率が高い新型コロナウイルスであっても、優れた医療技術を駆使し、かつ試験段階の薬を使えば、1週間ほどで治ることが分かった点にある。

 ニューヨークの病院事情は、恐らく東京に次いで、世界で2番目に大学病院などの大きな病院がたくさんある。それにもかかわらず、全米で断トツの致死率となっている。アンドリュー・クオモ知事はニューヨーク州を救ったヒーローのように言われているが、数字を照らし合わせながら見ると、やや不自然な印象を抱く。

 これは、ニューヨークで多くの黒人が新型コロナウイルスで死亡している事実と合わせて考えると、実は合点がいくかもしれない。クオモ知事やニューヨーク市長のビル・デブラシオ氏が、ニューヨーク内の病院に黒人を救うような適切な指令を出していなかった可能性があるからだ。