会社のお金は誰のものか?

 コロナ危機におけるワールドクラスと日本企業の対応の差の背景には、キャッシュに対する意識の違いがあります。これもまた、両者の決定的な違いの一つです。

 「会社のお金は誰のものか?」と問われれば、ワールドクラスは迷わず「株主のもの」と答えます。だから利益をとことん追求する。

 ところが日本企業はその意識が希薄です。それを示す例を紹介しましょう。

 社会人向けビジネススクールで、グローバル経営について「会社のお金は株主のもの」「だから利益・キャッシュフローを出さなければならない」という話をすると、受講生たちは口を揃えて「うちの会社では、売り上げより利益が大事という理屈が通りません」と言います。

 これは、デュポンの経理・財務部門を牽引してきた橋本さんには受け入れがたい発言です。

橋本「受講生の多くは社会人で、経営企画や経理・財務の部門に属する人も少なくありません。彼らが言いたいのは、日本企業では売り上げが大きい事業が偉いという不文律がまかり通っている、ということです。だから、満足に利益・キャッシュも上げられない事業をだらだらと続けるケースが後を絶たないのでしょう。一体どうやって株主に説明するつもりなのでしょうか」

 自分のお金であれば、利益の多寡にかかわらず事業を続けるのは勝手です。しかし、他人のお金なら話は別。

橋本「借りたものは返す、それが道理です。投資家から集めたお金は、彼らの期待に応えるゲイン(利得)とともに還元するのが、経営に携わる者として最低限の責務でしょう」

 この正論に真っ向から異を唱える人は、さすがに経理・財務部門にはいないはずです。企業の生命線ともいえる金流を押さえる彼らが理解しているのに、なぜ日本企業は変わらないのでしょうか。

橋本「それは、経理・財務部門が、社内業務の“後処理部隊”になっているからです」