企業がグローバルで活動すればするほど、経営は複雑になっていく
グローバル企業の定義とは?
COVID-19が世界中で広がり、日本国内でも非常事態宣言が出され、多くの日本企業が各地の情勢分析からリモートワークへの対応などに大わらわになったことはまだ記憶に新しいところです。そんななかで、グローバル企業は、緊張感を高めながらも、事前に準備された「プレイ・ブック」に則り、普段の「経営インフラ」を用いて、いつもの「バーチャルなチーム」によって、グローバルワイドで経営・事業活動を続けていました。そして、さらなる強靭化に向け、この危機すらも機会として捉えて進化を模索しています。
ところで、そもそも「グローバル企業」とは何なのでしょうか。
その定義については、さまざまな議論があります。たとえば、2004年にアラン・M・ラグマン教授らが発表した論文(*1)では、2001年の「フォーチュン・グローバル500」のうち、北米、欧州、アジア太平洋の3極の地域別売り上げが確認できた365社を調査したなかで、「本社のあるホーム地域が全体の半分以下で、かつ他の2地域がそれぞれ2割以上の売り上げ」の企業をグローバル企業と定義したところ、9社(*2)のみがそれに該当しました。同じ手法を用いた入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授の分析によると(*3)、2014年時点で日本企業のうち2社のみがその条件を満たしました。
これは、次の2つの観点からグローバル企業であるか否かを確認したものです。
●企業の強みとなる資産(アセット)が進出市場(ロケーション)にマッチしているか。
●海外市場においても競争力を発揮できているか。
ここまでではないものの、海外売上比率が高く、立派に海外で活躍されている日本企業は数多くあります。ただ、事業展開としては素晴らしくとも、企業経営となると「物足りなさ」を感じます。
それは、私が
●限られた経営資源をグローバルで効果的かつ効率的に活用するための経営システムを備えているか
という視点でグローバル企業かどうかを識別しているからです。それを本連載で説明していきます。
とは言っても、私の定義によるグローバル企業の「経営の常識」に、何か「魔法」があるわけではありません。グローバルという環境に対峙するため、実に基本動作に忠実です。
どれだけ基本に忠実か。それが明確にわかる質問があります。あなたの会社は、次の3つの質問にイエスと答えられるでしょうか。
*1 Alan M. Rugman and Alain Verbeke, “A perspective on regional and
global strategies of multina-tional enterprises,” Journal of
International Business, Springer, 2004.
*2 IBM、インテル、フィリップス、ノキア、コカ・コーラ、フレクストロニクス、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン、ソニー、キヤノン。
*3 入山章栄『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』日経BP、2015年