帰化した女性日本に帰化した中国遼寧省出身の櫻井唯(朴昊宇)さん 写真:筆者撮影

80年代から90年代にかけて、留学生や配偶者などの資格で多くの中国人が日本にやって来た。誰もが血眼でカネを求め、なかには荒っぽい犯罪に手を染める男たちもいたし、偽装結婚に走る女たちも多かった。しかし、今や中国は世界第2位のスーパー経済大国となり、カネ持ち観光客たちが大挙して日本に押し寄せるようになった。稼ぐためではなく、カネを落とすために。それなのに今も毎年、3000~4000人の中国人が自らの国籍を捨て去り、“落日の”日本に帰化している。なぜ彼ら、彼女らは、日本人になろうとしたのか。そんな素朴な疑問を複数の“元中国人”たちにぶつけてみたら、人それぞれ、さまざまな理由、事情があることが分かった。まず1人目として、トヨタグループの総合商社で貿易事務のエキスパートとして勤務する中国遼寧省出身の女性に話を聞いた。(ライター 根本直樹)

大多数は「永住権」を目指すが
彼女は「帰化」にこだわった

 留学などで来日した中国人がずっと日本で暮らしたい、仕事をしたいと思った場合、まず考えるのは、在留資格(ビザ)の一つである「永住権」の取得だ。ごく簡単に言ってしまえば、中国国籍のまま、死ぬまで日本に住み続けることができる資格である。

 選挙権がないこと以外は制約もほとんどなく、日本国内にいる限りは、職業も自由(公務員を除く)で、社会保障や公的サービスを含め、日本人とほぼ変わらない生活を送ることができる。だから日本在住の中国人の多くは、永住権取得を目指すのである。