故郷の中国人たちは
帰化に対して複雑な思い

 日本に帰化した李のことを、中国人たちはどう見ているのか。それを尋ねると、李はこんなエピソードを語り始めた。

「日本に帰化した後、生まれ故郷の中国湖南省で小学校の同窓会があった。私は帰化したことを自慢したくて、みんなの前で発表したわけ。そしたら半分の人は拍手してくれたけど、残る半分の人は無視したり、罵声を浴びせたりしてきた。彼らのそんな反応がすごく興味深かった」

 どんな罵声を浴びせられたのか。

「日本人の蔑称である『日本鬼子(リーベングイズ)』とか、中国語で『この売国奴が!』とか言われましたよ(笑)。『敵国の国民になりやがって』と怒鳴りながらつかみかかってきた奴もいる。差別するわけじゃないけど、こういう反応をした多くは社会的階層の低い人たち。外の世界を知ろうとせず、自分の地元だけしか見ていない。彼らの多くは保守的で、頭が固くて、日本=悪の国といまだに思い込んでいる。逆に拍手をして、乾杯してくれたのは、知識階級のレベルの高い人ばかり。それでも中には顔で笑いながら、心では『日本なんかに身を売りやがって』と舌を出している人もいるみたい。だから単純じゃないんです」

 帰化をする前後で、李自身はどう変わったのか。李は身を乗り出しながら熱く語った。

「帰化したメリットについて、多くの元中国人は『パスポートが便利になった』『金融機関から融資を受けやすくなった』などの生活上の変化を語る。でも私は違う。一番のメリットは参政権を持てたこと。帰化する前は、しょせんガイジン扱いされることが多かった。知識人と対談しても『ガイジンが何わかったようなこと言っているの』という態度をされたし、何かと待遇も態度も日本人とは違うわけ。でも帰化して、すごく自信がついた。日本人として堂々と意見を言えるようになった。これが帰化をして一番よかったこと。今では日本の右翼以上に、日本人であることに誇りを持っていますよ(笑)」

 そして急に真顔になると、李は静かにこう付け加えた。

「日本人としての誇りが生まれたのは正直な気持ちです。でも、中国に生まれ、そこで育ったことに対する誇りも失っていない。でもこれからは死ぬまで日本人として生きていくつもりです」

 日中両国に対する李の真剣な思いが垣間見えた。