経済界からは、深谷市に本社を置くセイフルという設備工事の会社がスポンサーに手を挙げてくださっています。しかし、まだこの地で大きなお金を生み出していくという段階ではありません。お金は後から付いてくると私は考えています。まずは、プロスポーツによって地域の「公益」に資することから全ては始まる。また、深谷市とはそういう土地である、と。

「日本の資本主義の父」の故郷でやるべきこと

池田純
横浜DeNAベイスターズ初代球団社長で、現在はさいたまスポーツコミッション会長兼さいたまブロンコス代表の池田純氏

 以前この連載でも触れましたが、深谷市は「日本の資本主義の父」と呼ばれる実業家、渋沢栄一の生まれ故郷です。渋沢栄一は公益を生み出す方法として「合本(がっぽん)主義」を唱えました。これは、大資本の力ではなく、志を同じくする人たちの力や小さな資本を結集させて目標を達成していこうとする考え方です。

 私が深谷市で実現したいと考えているのは、いわば「新合本主義」です。渋沢栄一の意志を継ぎ、「バスケットボールを軸として世代を超えて街を1つにする」という目標に向かって、市民の皆さんとさまざまな取り組みを進めていけば、いずれお金を出してくれる方々が現れると思っています。そう確かに言えるのは、私が横浜DeNAベイスターズの社長だった頃に、子どもを無料で横浜スタジアムに招待したり、無料の出張野球教室を実施したりしたことが、のちのち球団の成長につながったという成功体験があるからです。あれは、今思えば渋沢栄一流の公益資本主義的な取り組みだったと思います。

 来年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公は渋沢栄一です。渋沢栄一はまた、2024年に発行される新1万円札の「顔」になります。来年以降、渋沢栄一の思想や生きざまにあらためて脚光が当たることになるでしょう。深谷市は、「渋沢栄一政策推進部」という部署を設けているものの、地域の活性化にはアイデアと実践が不可欠です。渋沢栄一の合本主義の社会実験を試みる場所として、故郷である深谷市以上にふさわしい場所はないと私は思います。私たちブロンコスはバスケを通じて市と協力しながら、渋沢栄一の意志を実現していきたいと考えています。