大学受験の最難関である東大理三に、4人のお子さん全員を合格させた佐藤亮子さん。2015年の秋に佐藤さんにお会いして以来、取材や講演などで軽く100回以上お話を伺った。驚くのは話の引き出しの多さだ。
今までに幼児教育の重要性、中学受験や大学受験のサポート方法、子育て論などについてたくさんお話を伺ったが、著書『東大理三に3男1女を合格させた母親が教える 東大に入るお金と時間の使い方』(ダイヤモンド社)は「お金と時間」という新しい切り口。「佐藤さんはどのようにお金と時間を使ったか」に加え、子どもの学力を伸ばすためのさまざまな「佐藤ママメソッド」が紹介されている。
第一子であるご長男を授かった時、佐藤さんは「子どもの未来の可能性を拓くために重要なのは教育。本人が希望する道に進めるよう、能力を最大限に伸ばしてあげたい」と思ったという。ご長男が生まれる前から小学校の教科書に目を通し、童謡集を購入するなどの準備を始めた佐藤さんは、教育費は惜しまず、時間の無駄を省いてきた。
わが子の幸せな未来のために学力を伸ばしたい、わが子を東大に入れたいと考える方はもちろんのこと、社会人や専業主婦にとっても役に立つ情報が満載だ。5回に分けて、佐藤さんの魅力、独自の子育て、書籍の特徴などについて紹介する。(教育ジャーナリスト 庄村敦子 初出:2020年11月21日)
東大理三に3男1女を合格させた佐藤亮子さんとご主人の対談の取材のとき、ご主人が「ママの本はすべて読んだけど、よくこんなさまざまなメソッドを考えたな、って感心しましたよ」とお話しされた言葉が今も心に残っている。私もまったく同感だ。
佐藤さんは著書『東大理三に3男1女を合格させた母親が教える 東大に入るお金と時間の使い方』(ダイヤモンド社)で、それらの佐藤ママメソッドを「読者のみなさんのお役に立てればうれしい」という思いで公開している。
連載の最終回では、佐藤さんが実践してきた幼児教育や勉強のサポート方法、オリジナルの教材作りなどについて簡単に紹介する。詳細については、ぜひ同書を読んでほしい。
●3歳までに絵本1万冊を読み聞かせ
ご長男が生後6ヵ月のときに、公文式教室に見学に行った佐藤さんは、「うた200、読み聞かせ1万、賢い子」というスローガンを知った。「3歳までに童謡を200曲歌い、絵本を1万冊読み聞かせると、賢い子になる」と説明され、早速、実行しようと決心。
1万を3歳までの日数で割って日割り計算。赤ちゃん絵本はすぐに読めるため、最初は多めに設定し、「1日15冊」を目標にした。1ヵ月が1枚になった細長いカレンダーを用意し、その日に読んだ数と累計冊数を記録し、「3歳までに絵本1万冊」を達成した。
●読み聞かせのポイント
私自身、数ヵ月後が締切の仕事は、締切に間に合わせるためには1日にどのくらい書けばいいかを計算し、毎日ノートにその日に書いた分量と、累計の分量を記入。「あと○」と書いて執筆してきた。
数値目標を立て、毎日数字を記入しながら達成する佐藤ママメソッドだと、やる気が出て、楽しく読み聞かせをすることができる。私も、娘たちが幼いときに絵本の読み聞かせをしてあげたほか、小学校の読み聞かせボランティアにも参加した。
佐藤さんもお話しされているが、「子どものウケを狙い、声色や読むスピードを変えて、工夫する」ことがポイントだ。親子ともに絵本を楽しむことが何より大切。幼いときの絵本の読み聞かせが、その後の子どもの読解力の基礎となる。
●3歳までに童謡1万曲を歌い聞かせ
公文式のスローガンは「うた200」だったが、読み聞かせの「1万」という数字のインパクトがあまりにも強くて、佐藤さんは童謡も1万曲だと思いこんだ。途中で200だったことに気付いたが、ご主人が「協力するから、絵本も童謡も『1万』を達成しよう!」と張り切っていたため、「200だった」とは言えなかったそうだ。
童謡は親が歌った曲だけをカウントし、前述の細長いカレンダーにその日に歌った曲数と累計曲数を記録した。ご主人の協力は、読み聞かせでは2割ぐらいだったが、カラオケ好きなので、童謡は6割ぐらい貢献した。
●3歳までに「お金と時間」を使うとラクになる
佐藤さんは、「子どもにお金をかけるのは早ければ早いほどいい。同じ3年間にお金と時間を使うのなら、高校の3年間よりも3歳までの3年間にかけた方が、効率がいい」という考えだ。
1歳前後から公文式教室に通わせ、3歳までに「絵本の読み聞かせと童謡の歌い聞かせ1万」を達成した以外にも、お子さんと一緒に「くもんのカード」シリーズやジグソーパズルなどの知育玩具を楽しんだ。「子どもと楽しく遊びながら学びになれば」と思ってのことだが、結果として、中学受験のときにかなり役立ったという。
佐藤さんはお子さんに「やりなさい」と言って無理矢理やらせたことは一度もない。お子さんたちは小学校に入学後、「楽しく遊んでいたことが、勉強だったんだ……」と驚いたそうだ。
●1教科15分の短時間集中勉強法
三男さんは小学生の頃、おっとりとした性格で、集中力に欠けるところがあった。中学受験塾・浜学園の先生から、「授業中、15分しか集中できていないので、勉強は教科15分の短時間集中でやった方がいい」とアドバイスされた。
1教科15分でやれそうな問題量を決め、キッチンタイマーをセット。時間が来たら、解答途中でも取り上げて、次の科目に移った。取り上げられた問題はまたやらなくてはならないため、三男さんは必死になって解くようになった。
この方法を続けたところ、2ヵ月くらい経った頃には、1~2時間集中できるようになったそうだ。集中力を強化したいときにぜひやってみたいメソッドだ。
●解答スペースを大きくとった「特製ノート」
「塾のテキストを左側に置いて、問題を見ながら右側に置いたノートに解答を書くよりも、問題と解答スペースが同じページにある方が、時間の無駄を省けると思いました」
佐藤さんはそう考えて、ご長男が小5のときから「特製ノート」を作り始めた。
塾の算数のテキストを全ページコピーして、最初の問題から順番にハサミで切り取り、ノートのページの一番上にノリで貼った。
●ノートはケチらずどんどん使わせる
「小さな字でちまちま書いていると、発想が広がらず、ミスも多くなります。ノート代はけちらずに、大きな文字で書かせて、どんどんノートを使わせましょう。束のノートを買うと割安になります」とアドバイスする。
佐藤家には4人分のノートのストックが、常に100冊くらいあったという。
●確実に暗記できる「必殺ノート」
お子さんがテストで何度も間違えた項目や重要事項を、大きな文字でカラフルに書いた「必殺ノート」も作った。
中学受験の直前期には、お子さんの食事の時間も活用。「必殺ノート」をお子さんに見せながら、佐藤さんがページをめくって次々に読んだ。目と耳の両方から入ってくる方が覚えやすいからだ。ページをめくりやすいよう、A4のリングタイプのノートを選ぶことがコツだ。
●同時通訳勉強法
次男さんが東大の英語の過去問の見直しに時間がかかっているのを見たときに、効率をアップさせるために思いついたのが、「同時通訳勉強法」。東大の長文読解問題はかなり長いため、「同時通訳するね」と言って、英文を黙読している次男さんの横で、英文を読むスピードに合わせて日本語訳を読んだ。
「同時通訳勉強法」によって、わからない単語で止まることなく読み進められるため、時間の短縮につながり、効率がアップしたそうだ。
●古文と漢文も同時通訳で勉強
お嬢さんには、古文と漢文を勉強しているときに、日本語訳を読んであげた。「わからない単語の意味も耳からすっと入ってきて効率よく勉強できました」と感謝されている。
「同時通訳勉強法」のいいところは、英語、古文、漢文が得意である必要がないこと。日本語訳を読んであげるだけなので、お子さんの勉強の効率アップのためにオススメのメソッドだ。
●過去問集はバラして使いやすくする
過去問集は分厚くて重いため、持ち運びが大変。解答を探すときにもちょっと時間がかかる。
佐藤さんは、お子さんたちが過去問集を使いやすいように、過去問をバラした。その方法は、『東大理三に3男1女を合格させた母親が教える 東大に入るお金と時間の使い方』(ダイヤモンド社)に詳しく出ている。
簡単に説明すると、過去問集を問題編と解答編に分割し、問題編は年度別に分け、解答編にはインデックスをつける。問題編を年度別に分けるとかなり薄くなるので、お子さんたちは必要な年度を通学用のカバンやリュックに入れ、通学時間や休み時間を使って、解いていたという。
解答編にはインデックスがついているため、一発で解答を探せる。自宅で過去問を解いているときには、佐藤さんがお子さんの横で採点。間違えた問題の解答と解説を色鉛筆で囲んで見やすくした。
●子どもの未来を決めるのは
親の「お金と時間の使い方」
親が子どものために時間を使うだけで、子どもの勉強効率は格段にアップするのだ。
佐藤さんの取材で子育てやご両親、受験のお話を伺うと、私もそれらのことを思い出し、懐かしい気持ちになった。佐藤さんにも私にも、両親や子どもとの楽しい思い出が無尽蔵にある。子育ての思い出話で大笑いしたことは数えきれない。
子育ての最中には、悩んだり迷ったりすることもあるが、時が経てば笑い話になることも多い。佐藤さんの著書には、子どもの学力を伸ばすための「お金と時間の使い方」のメソッドがぎっしりと詰まっている。
わが子の未来を決めるのは、親の「お金と時間の使い方」だ。お子さんを東大に入れたいと考える親はもちろんのこと、わが子に幸せな人生を歩んでほしい、わが子の学力を伸ばしてあげたいと願うすべての親は、同書を熟読したうえで、やってみたいこと、できそうなことを、いいとこどりの精神でとりあえず実践してみよう。