日本経済の構造として、この事例に続いて連鎖的に新型コロナ禍による大リストラ時代が来るかどうかは、どれだけの企業がどのような理由で需要減少に直面するかによるでしょう。航空会社やビジネスホテルなど、アフターコロナ時代には供給過多になる可能性が高い業界がいくつか特定されていることもあり、雇用の先行きについても予断を許さない状況が続くと思われます。

コロナとは異なる「2つの特殊要因」
子会社に影響を与えた日立製作所の改革

 一方で、今回の日立金属のニュースには、コロナとは別に2つの特殊要因があることも念頭においておくべきでしょう。そのうち1つの要因は「今回のリストラは特別な事情である」ということを裏付けるかもしれません。そしてもう1つの特殊事情はこのニュースにさらに違った意味を持たせます。

 まず特殊要因の1つは、親会社の日立製作所がリーマンショック以降、過去10年以上かけて構造改革を行ってきたという事実です。事業分野をエレクトロニクスにフォーカスする目的で、昭和の時代に広げてきた多角化事業の売却を推し進めてきました。

 2006年当時は日立の上場子会社は22社ありました。その後、これらの子会社は次々と再編されていきます。ここ数年では、日立工機、クラリオン、日立化成が売却され、ちょうど先週、日立建機についても売却方針を固めたとメディアで報じられたところです。

 そうなると、残る上場子会社は日立金属1社だけで、その売却も時間の問題だと見られており、真偽のほどはともかく、すでに日立製作所が売却先の検討に入ったという報道も出始めています。そのような流れの中で、今年4月に日立金属のトップに就任した西山光秋CEOは、日立製作所本体のCFOだった人物です。

 つまり西山CEOの着任は、事業再編のためだったのではないでしょうか。次期中期計画の間に赤字を出し切り、リストラによって構造改革を行い、外部の投資家に魅力的な企業に形を整える――。そのためのトップ人事だった可能性があります。

 そう捉えると、大規模なリストラは必然的なプランであり、1000人規模の希望退職を募ることは、社内から見れば既定路線と言えるのではないでしょうか。言い換えると、同社で大リストラが行われるのは日立の特殊事情であって、新型コロナによる大不況を見据えたものではない可能性があるということになります。