開戦 ファンド大買収#1
Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

オリンパスのデジタルカメラ事業売却、武田薬品工業の大衆薬事業売却……大手企業が事業や子会社を売却する動きが活発化している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で経済環境が不透明になる中、非中核の事業を手放し、中核事業に経営資源を集中させる方向にあるのだ。この局面で脚光を浴びているのが日立製作所。特集『開戦 ファンド大買収』(全10回)の#1では、投資ファンドも舌を巻く日立の「売り上手」な横顔を描く。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

オリンパスデジカメ、ペッパーランチ
売却はまだまだ続く

 今年上期(1~6月期)、日本企業が絡むM&A(企業の合併・買収)件数は1808件と、上期としては9年ぶりの減少となった。ところが、上場企業が子会社や事業を切り出す「カーブアウト」型の売却案件に限れば、前年同期比13%増の200件と、むしろ増えているのだ(M&A助言のレコフによる)。

 この間に明らかになったカーブアウト売却には、オリンパスがデジタルカメラ事業を投資ファンドの日本産業パートナーズに売却する件や、LIXILグループがホームセンター子会社のLIXILビバをアークランドサカモトに売却する件などがあった。7月にも、ペッパーフードサービスがペッパーランチ事業を投資ファンドのJ-STARに売却する件が発表されている。足元では武田薬品工業による大衆薬事業の売却を巡って、複数の投資ファンドと事業会社が入札中だ。

 上場企業を相手に事業の売却・買収をコンサルティングしている日本M&Aセンターの西川大介企業戦略部部長は、「これまで大手企業の経営陣は事業や子会社の売却について、比較的慎重な姿勢だった。だが5月以降は一転し、大胆な売却提案にも耳を傾けるようになっている」と話す。コロナ禍による事業環境の暗転を受け、売り上げ規模よりも収益性を重視する経営判断が増えていることが背景にある。

 また、あきんどスシローの買収などを手掛けた英系投資ファンド、ペルミラ・アドバイザーズの藤井良太郎日本代表は、売却に対する日本企業の姿勢はコロナ前から徐々に変化していたと指摘する。「かつては非中核の子会社の売却を提案しても、『全ての子会社が中核だ』と言う日本企業は少なくなかった。だが最近は、電機産業に多いコングロマリット(複合企業)ばかりか、時価総額数千億円規模の企業も事業売却に抵抗感がなくなってきた」(藤井氏)。

 その理由は国内に、投資ファンドなどへの事業や子会社の売却をうまく活用し、事業構造の変革を加速させた企業が出てきたことだ。代表格が日立製作所である。