決まり文句になってきた
「命と経済の両立」
新型コロナ対策を論じるときに「命と経済の両立」というフレーズがよく使われる。確かに、人の命も救うし経済も活性化する対策ならば、誰も文句はない。しかし、そのような対策が果たして存在するのか。
経済活動が再開され、人と人との接触が増えてくれば、感染リスクは高まり、命を落とす人も出てくる。感染を防ぐことを第一に考えれば、経済活動の制限を続けるのが一番の対策だ。少なくとも、有効なワクチンが開発されるまでは、命と経済の両立は達成が難しい課題とならざるを得ない。
もちろん、感染防止と経済の活性化はどちらも大事であり、片方を無視することはできない。しかし最後には、両者のバランスをどう取るのかという選択の問題が残るのではないか。
もっとも、この考え方はあまり評判がよくない。半年ほど前に、「人の命か経済か、新型コロナ対策で迫られる選択」という寄稿をしたところ、「そういう単純化された安易な発想はよろしくない」との意見をいただいた。
確かに、単純化できるものではないかもしれないが、「命と経済の両立」というフレーズが、決まり文句のように安易に使われすぎてはいないか。「この対策こそが、命と経済をどちらも守るものだ」と言われても、すんなり納得できるものではない。