2月9日、ニューヨークでキンドル2を発表するアマゾンのジェフ・ベゾスCEO。Photo (c) AP images |
「アマゾンがキンドル2を発表」――。
2月9日のアメリカのビジネス・メディアは、この話題でもちきりになった。最初のバージョンからデザインがグッとおしゃれになり、さらに軽量かつ小型化。厚みはiPhoneの上を行く0.36インチ(0.91センチ)ながら、スクリーンは明瞭になった。ダウンロードできる書籍数も3倍近くの23万冊に増え、ページ繰りも素早い。発売予定は2月24日。
だが、今回の発表のポイントはそんなおしゃれなデバイスにあるのではない。ここでCEO(最高経営責任者)のジェフ・ベゾスが言及したある小さなせりふが、アマゾンのこれからのビジネスモデルをくっきりと浮かび上がらせたのだ。それは、書籍と新聞・雑誌メディアの未来のエコシステムの中核にアマゾンが陣取るということなのである。
2007年秋に最初のバージョンが発表された際、キンドルのデビューは地味なものでしかなかった。だが意外なことに、実はこの1年余りの間にキンドルは50万個以上を売り上げるヒット製品となっている。新しいもの好き、あるいはコンピュータ好きのギーク(おたく)だけでなく、読書好きな人々、頻繁に旅行する人々、通常25ドルほどもする新刊のベストセラーを10ドル以下で手に入れたい人々がキンドルを買い漁ったのだ。
電子書籍リーダーは10年以上前からいくつも製品が出ていたが、一つとして成功した試しがなかった。中には大手書籍チェーンが鳴り物入りで提携を組んだ製品もあったが、それでも広まらなかったのだ。技術としての電子書籍は可能でも、ユーザーにとって決して使いやすいものではなかったからだ。
そこに出て来たキンドルは、モバイル性と便利さを細やかな配慮のもとに合体させたものだった。デバイスそのものに通信機能を搭載して、コンピュータを介さず、いつでもどこでも電子書籍を買えるようにしたのだ。しかも、通信会社との別契約なし。分厚い小説でも1分以内にダウンロードできるキンドルは、読みたい時に好きな書籍が手に入る、身軽で自由なまったく新しいデバイスだった。
さて、新しいキンドル2の発表でベゾスが口にした一言とは何か。それは「ウィスパーシンク」という新しいフィーチャーに関するものだ。
ウィスパーシンクは、キンドルのユーザーがどのコンテンツを読んでいるのか、さらにそのコンテンツのどの部分を読んでいるのかをモニターする技術だが、ベゾスはそれが「キンドル1やキンドル2、そしてその他のデバイスを通じて」機能すると明らかにした。