2019年に中国で発生した新型コロナウィルス(COVID-19)は、2020年に世界中で大流行し、いまだに収束する気配がない。
日本政府はGo Toキャンペーンに熱心だが、季節が冬に向かうのに合わせてか、北海道の感染者が激増している。
ヨーロッパでは再びロックダウンに踏み切る地域も出てきた。
経済アナリストであり、歴史にも詳しい中原圭介氏は、この状態が長引く、あるいは収束してもすぐに次のウィルスが現れると読む。
つまり我々は、ウィルスと共存する時代を生きていかねばならないのだ。
我々はこの困難な状況の中でいかにして経済を立て直していくべきなのか?
中原圭介氏の最新刊である「疫病と投資」から一部を引用し、考えてみたい。
SARSもMERSも「コロナ」である
541年から542年にかけて地中海を中心に感染が広がったペストと、「黒死病」と言われ1347年から1352年にかけて欧州を中心に広がったペストとの間には、実に800年もの時間がありました。かつてパンデミックは長いスパンで巡ってくるものだったのです。
しかし2000年以降、新型ウイルスの流行は比較的短い周期で起きています。特に「コロナウイルス」はこの20年以内の間に3度にわたって広がりを見せていることも注目したいところです。
2019年に中国の武漢を発生源として世界中に広がったコロナウイルスについて皆、「コロナ、コロナ」と騒いでいますが、実は2002年から2003年にかけて広がったのもコロナウイルスですし、2012年に広がったのもコロナウイルスです。前者をSARS、後者をMERSと称しており、2019年から広がったのはCOVID‐19というのが正式名称です。「コロナウイルス」という括りにおいて、いずれも同じと言っても良いでしょう。
SARSはSARSコロナウイルスを病原体とする感染症であり、感染源動物のコウモリから人への感染が広がりました。2002年に中国の広東省で発症が初めて確認され、その後アジアを中心に2003年まで流行、陽性者のうち死亡する割合(致死率)は10%程度でした。
中東呼吸器症候群(MERS)はMERSコロナウイルスによる感染症であり、感染源動物はヒトコブラクダでした。2012年にサウジアラビアなど中東地域で広まり、致死率は30%を超えていました。2015年には韓国でも流行しましたが、これは中東を旅行した韓国人が自国内に戻って感染を広げてしまったためです。
現在、世界で蔓延している新型コロナウイルス(COVID‐19)は、感染源がコウモリなのかその他の動物なのかはっきりしていませんが、中国の武漢から欧米、アジア、南米、アフリカと全世界に広がっています。致死率は3~4%と低いのですが、SARSやMERSに比べて無症状・軽症の感染者が多く、完全な封じ込めが難しいのが厄介な点です。
新しい感染症が発生する間隔は、SARSやMERS、そして今回のCOVID‐19に至る過程で短期化していることからも想像がつくように、将来、確実に短くなっていくと考えられます。世界の人口が増加の一途をたどっているなかで、人間が従来は野生動物のみの生息地だった場所に入り込んでしまった影響が大きいのです。