コロナ禍への政治の対応を予測できていれば、投資家はこれまでの有事を乗り切れていたかもしれない(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 行動制限や異例の大規模経済対策という政治判断を予測できていれば、今までの有事相場を乗り切れていたかもしれない。今後も、新型コロナウイルス感染の終息時期の判断や経済活動の再開など、政治の動きを正しく読み取ることが有事相場では重要だ。特に政策対応では、国が民間企業への支援に強くコミットすれば、リスク資産の上昇を後押しするとみる。

コロナリスクを市場は軽視
政治判断が経済・市場の激変に

 2020年の金融市場は、新型コロナウイルスの感染拡大リスクを軽視したかのように動いた。1月31日、WHOは新型コロナウイルスについて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と発表したが、S&P500は2月19日、終値ベースの史上最高値を更新した。金融指標は、新型コロナウイルスの感染拡大リスクに警鐘を鳴らしていなかったようにみえる。

 近年、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)などの疫病がリーマンショックほどの悪影響を及ぼさなかったという経験則が、市場に安心感を与えてしまったかもしれない。

 しかし、イタリア政府が新型コロナウイルスの感染者急増を受けて行動制限を始めたことで、中国で1月に起きたリスクが遠く離れた欧米でも一気に身近なリスクとなった。

 2月24日以降、世界的に株価急落が始まり、恐怖指数と呼ばれるVIX指数は上昇し、クレジットスプレッドの拡大と、安全資産とされる米国債の価格上昇(金利低下)などが同時に発生した。疫病が有事に発展するリスクを、市場が織り込むのは難しい。

 金融市場が新型コロナウイルスを有事とみなした根源は、新型コロナウイルスの感染が想定外に拡大した点にあるが、経済や市場を激変させたのは政治判断によるものだ。

 WHO(世界保健機関)による集計では、世界株価急落前の2月21日時点における約7.6万人の感染確認者のうち、中国以外の国・地域が占める割合は2%未満で、欧州主要国や日米の感染確認者数はそれぞれ100人未満だった。

 それでも、イタリアは2月下旬に行動制限に踏み切り、アメリカが3月に行動制限に一気に舵を切った。一方、日本は4月初旬まで非常事態宣言を持ち越した。戦争や大規模災害は明らかな有事だが、新型コロナウイルスの脅威は各国政府が判断する有事であり、市場は政治判断を予測する必要があった。