中国よりも米国で大ヒット?

 主演女優リウ・イーフェイの香港警察擁護発言を発端にボイコット運動がアジアで広がったり、作品のエンドクレジットに中国の新疆ウイグル自治区政府に謝意を表したことで米・共和党の議員が配信および公開停止キャンペーンを行ったり、次々と議論が巻き起こった。それゆえ問題作と扱われることも少なくはない。

 映画のストーリーは、618年から300年近く栄えた唐の時代を舞台に、中国の女性英雄伝説をもとに描いていて、本来ならば中国で大いにアピールできる作品であった。しかし、Disney+での配信から数日遅れて中国で劇場公開されると、公開3日間のオープニング興収は2300万ドルの実績にとどまった。中国人も共感するような女性のエンパワーメントと自己実現のストーリーに集中させた作品でも、論争の渦に巻き込まれた作品が全肯定されることは難しかったようだ。

 一方、本国米国ではDisney+での公開開始から4日間(9月4~7日)で110万以上の世帯が30ドルの追加料金を支払って『ムーラン』を鑑賞したことがわかった。これは3350万ドルの興行収入に相当する。中国のオープニング劇場興収と単純に比較しただけでも、上回る結果だ。

 この『ムーラン』の視聴状況について、米ウォルト・ディズニーCFOのクリスティン・マッカーシーは配信直後に行われた9月9日の投資家会合で、「とても満足している」と言及したことが報じられている。配信以前は、ディズニーCEOのボブ・チャペックがアナリストに対し、今回の配信ファーストの展開について「1回限りのイベント」と断りを入れ、「新しいビジネス・ウィンドウ・モデルを検討しているわけでは全くない」と答えていたのだが、配信後のマッカーシーの「満足」という言葉には視聴者ニーズを見直すタイミングを確信していることも含まれているように思えてならない。

 長引くコロナ禍の影響を受けて、世界各地で劇場閉鎖が続き、消費者がエンターテインメントを楽しむ傾向が高まっている事実があるからだ。

クリスマスの配信作品はピクサーアニメ、欧州が猛反対の理由

 もともと『ムーラン』は映画館で公開される計画で進められ、新型コロナウイルスの影響により、本国米国での公開日が延期された後、Disney+で世界配信することになった。劇場公開からDisney+での配信に切り替わったディズニー作品は『ムーラン』のほかにファンタジー・アドベンチャー実写映画『アルテミスと妖精の身代金』もある。そして3つ目のDisney+独占配信作品が目玉としてクリスマス時期に控えている。ヒットを狙うピクサー・アニメーション『ソウルフル・ワールド』だ。

 この『ソウルフル・ワールド』の映画館公開の見送りの発表を受けて、欧州の映画館経営者を代表する国際映画館連合(UNIC)は反論の声明を出している。