津賀一宏・パナソニック社長が、来期ついに退き会長職に就く。在任期間中は収益アップがなかなかかなわず苦しんだが、社長交代と同時に発表した組織変更で、成長への道筋を示す。津賀氏が新社長に託した大改革の内容とは。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
テレビ・自動車の再建屋が挑む本丸改革
楠見新政権に立ちはだかる壁
11月13日、パナソニックは津賀一宏氏に代わり、来年6月から楠見雄規氏が社長に就任する人事を発表した。社長交代は実に9年ぶりとなるが、津賀氏の成長戦略は道半ばで終わる。
「まさに寝耳に水だった」(パナソニック幹部)。11月13日、パナソニックが9年ぶりの社長交代を発表すると、社内からは驚きの声が上がった。
現社長である津賀一宏氏からトップの座を引き継ぐのは、パナソニックの社内カンパニーであるオートモーティブ(AM)社社長の楠見雄規常務執行役員だ。
仕事上では、情より理を重んじる理論派とされる。その合理性と頭の良さにより、「ストレートな物言いをし過ぎて周囲にショックを与えることもあるが、発言のフォローをする気遣いもある。悪気も裏表もないさっぱりとした人ですよ」(パナソニック関係者)。
出身は津賀氏と同じく、R&D畑だ。天気予報などのデータ通信を可能にするテレビの「dボタン」や、録画機「DIGA」の開発に携わった経験がある。
ただしR&D一辺倒だったわけではない。津賀社長がプラズマディスプレーからの撤退を決めた2013年、テレビ事業部長を務めていたのが楠見氏だ。その後、数年にわたってテレビ事業等の立て直しに汗を流した再建屋でもある。
そしてAM社社長として今度は自動車事業の再建に送り込まれたのだが、ここでトヨタ自動車との車載電池の合弁会社設立に向け、主導的に動いた「実績」が社長昇格の決め手の一つとなったようだ。