ソニーとパナソニックの経営機構刷新。両社はその先に何を見つめているのか Photo:Diamond

パナソニックが持ち株会社制に
もしも松下幸之助が生きていたら?

 パナソニックが、2012年からトップを務めてきた津賀一宏氏から楠見雄規氏へと社長を交代し、同時に社名も変更して持株会社制に移行すると発表した。社名変更といえば、ソニーも来年から本社をソニーグループに変更し、各事業会社がその下にぶら下がる格好になるという。両社はなぜこのタイミングで組織変更をするのか。そして、パナソニックの社長交代は何を意味するのだろうか。

 結論からいえば、両社の歴史を紐解けばそれぞれの会社らしい意思決定だということだ。

 パナソニックは、日本でいち早く事業部制を実施し、事業ごとに商売の責任を持たせることで、ミドルマネジメントや現場社員の士気を上げてきた。戦後の財閥解体の流れの中で、当時の松下は松下電器産業と松下電工とに別れたが、これも戦前に松下幸之助がつくった事業部が独立会社になった格好だ。

 松下正治社長時代に始めた事業本部制も、松下が他社に先駆けて実施した組織形態であったし、現在もビジネスユニットごとのカンパニー制を実施してきた。かつては持株会社制が禁止されていたので、言わばバーチャルに持株会社制を実施してきたのがパナソニックの歴史である。

 今回の持株会社制の移行は、パナソニックの業務範囲の広がりと、コロナ禍をはじめとしたそれぞれの事業が直面している不確実性の高さから、全社戦略と個々の事業戦略を1つの会社の1人のトップが見ることが難しい状況になったということであろう。

 津賀社長への評価は、在任中の10年近くの前半と後半で大きく異なるといえる。前半は、特定の問題のある事業を切り離し、注力すべき事業に集中して経営資源を投入してきたので、グループ全体のトップが個別事業へのてこ入れを行うことで、経営の改善を行ってきた。その後、全社的なポートフォリオを考えた全社戦略と、個別の事業戦略の陣頭指揮を1人のトップが担う限界が見えてきたということが、津賀社長の個人資質や能力の問題とは別に、任期後半の評価の低下に影響しているのではないだろうか。

 これまでも各カンパニー長が独立して事業の責任を負ってきたので、「持株会社制に移行した事業会社と変わらないではないか」という批判があるかもしれない。しかし、商法上独立した事業会社の社長と、バーチャルな企業内組織のトップでは、その責任や重圧はやはり異なるのではないか。松下幸之助が事業部制を持株会社制として実施しなかったのは、当時の法規制によるもので、松下幸之助が現在のパナソニックのリーダーであったら、やはり持株会社制に移行していたのではないだろうか。