『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

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[質問]
編集者のアシスタント/ライターを無償でやるか迷っています。

 その方はお金がないそうなので、仕事や技術を教える代わりにタダで働いてもらう、いわゆる編集者/ライターの塾、みたいな感じだと言っています。

 私自身は編集者やライターは未経験です。ですが編集者やライターに興味があるのと、その編集者が担当した本が好きです。

 やってみたいので無償でも引き受けていいと思いますか? それともちゃんとお金が出るところでインターンなどをした方がいいのでしょうか?

書物への憧れや信頼を利用する搾取行為は許せません

[読書猿の回答]
 絶対にダメです。無料で仕事をしてはいけません。ここで目論まれているのは「やりがい搾取」であり、薄汚い闇取引です。

 これ以上、この編集者を名乗る奸物と関われば、あなたはきっと編集の仕事やあるいは書物に関わる様々なことを嫌いになってしまうでしょう。

 まず仕事を頼む側がコストを負担しないならば、経済的にも心理的にも歯止めがないため、仕事を受ける側の負担は際限なく膨らみます。あなたはキャパを超えた仕事を背負うことになるでしょう。

 そもそも万が一、その編集者が教えることがあなたの仕事の対価に見合うものなのだとしたら、賃金を支払った上で、別途授業料を取ればよいだけの話です。正規の金銭をやり取りしない(税金その他のコストをちょろまかす)闇取引をする理由がありません。

 短期的にその編集者の生産性だけは上がるかもしれません。何しろコスト無しの労働力を使えるのですから。

 しかしそのことで、編集がその一部である書物の世界は大切なものを確実に失います。それは書物の世界への憧れであり信頼です。

 これはどうでもよいものでは決してありません。これらがあるからこそ、書物の世界は様々な担い手を集め、読み手を集めても来られたのですから。

 何度も言っていますが、著者や編集者が心血を注ぐ一冊の書物は、決してその一冊だけで存在するのではありません。その背後にある無数の書物があってこそ、この世に生まれてくるのです。

 そのことに思い至らず、あるいは思い至ったとしても敢えて無視して己が私利を追求する者が編集者を名乗るのであれば、書物の世界に仇をなす者として指弾すべきです。

 先人が築いてきた書物への信頼・憧れを積み増すというコストを負担するのは正反対に、それにただ乗りして、他人に奴隷労働させようというのですから。

 書物の未来の担い手を二度書物に関わらぬように害しておいて、自分は出版から利を貪ろうとする所業、絶対に許しておけません。