バッハ会長来日はIOCにとって屈辱的だった!?日本との力関係に変化Photo:Carl Court/gettyimages

なぜバッハ会長は来日したのか

 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が11月15日に来日し、菅義偉首相、森喜朗会長、小池百合子東京都知事らと会談した。ヨーロッパで新型コロナウイルス感染がまた拡大する中、スイスで1週間の自主隔離をしてまでバッハ会長が来日した目的は何だったのか?様々な憶測が飛び交った。

 開催に反対の主張を続ける一部のメディアやジャーナリストは盛んに「すでに東京五輪の中止は決まっている。今回の来日でいよいよ中止を発表する」との推論を展開していた。実際にそのような発表はなかったが、すると今度は「東京五輪の利権を維持するため、中止は決めたが発表は延期した」といった発信も行われている。

 いま日本社会は、かみ合わない議論や指摘が繰り返し行われる不毛な状況に陥っている。コロナ禍の影響で延期された東京五輪の話題も代表例で、それぞれが自分の主張を繰り返すばかりで、実態の把握や分析が恐ろしく放棄されている。だから、本当のところ何が起こっているのか、どんな意思や思惑が絡み合いながら事態が動いているのか、国民にはほとんど伝えられていない。

 私はスポーツライターの立場から、できるだけ冷静に、いま東京五輪をめぐって何が起きているのか、バッハ会長の来日の目的に関連してお伝えしたい。