リーダーがリーダーであるための要件に、「フォロワーがいること」を挙げたのは、マネジメントの父ピーター・ドラッカーだ。彼の死後、世界は不確実性を増す一方で、いかに卓越したリーダーであっても、1人でパーフェクトストーム(究極の嵐)のなかを進むことは不可能になっている。見通しのきかない道を進むには、経営のプロフェッショナルで構成されたチームが欠かせない。CFOやCLOの育成に携わってきた日本CFO協会の谷口宏専務理事との対話を通じて、新たな経営チーム像を探る。(マネジメントコンサルタント 日置圭介)

財務が弱いと「やられてしまう」

日置圭介 世界で戦うことを選択するのであれば、CxOと彼らが率いるコーポレート部門を強くすることは、経営の必須条件です。なかでもCFO率いるファイナンス組織が、いわゆる経理・財務の枠を超えて、経営者と事業部門にとって一蓮托生のビジネスパートナーになれるかどうかは、とても重要なカギを握っています。

谷口宏(やぐち・ひろし)
日本CFO協会/日本CHRO協会/日本CLO協会 専務理事
東京大学経済学部卒業、住友銀行(現・三井住友銀行)入行。同行にて事業調査、人事、企業金融を経験した後、2000年に株式会社CFO本部、日本CFO協会を設立し、CFO、経営財務部門のネットワーク構築や各種セミナーや研修の開催、資格・検定試験の実施など、企業財務のプロを育成する教育事業を展開する。世界のCFO協会の国際組織・国際財務幹部協会連盟(IAFEI)のアジア代表及び会長を歴任後、現在は諮問委員を務める。2018年に日本CHRO協会、2020年に日本CLO協会を設立し、専務理事として日本企業のコーポレート機能の強化に取り組む。

谷口宏 同感です。そうした想いから2000年に日本CFO協会を立ち上げました。1990年代後半以降、日本の金融界は激動の時代を迎えました。銀行員だった私は、バブル崩壊の最後の清算があちこちで行われ大手金融機関がバタバタと倒れていくのを間近に見て、時代が大きく変わるのを感じていました。

 事業会社も、高度成長期モデルのままで、市場シェアを拡大して売り上げを伸ばせば利益は後からついて来る、お金は銀行が貸してくれる、という時代でした。ところが、金融機関の貸し渋りや株式の持ち合い解消が進み、企業が自力で資本市場から資金調達する流れが本格化します。財務を強化しなければならないことは明らかでした。

 巨額の税金を投入した政府系金融機関が外資にわずか10億円で買われたのも2000年です。のちに買い手に有利な契約条項までついていたことが判明したとき、財務や法務が弱いとやられてしまうという怖さを感じました。これからは経営層や官僚も含めて、みんながこぞって財務を勉強する時代が来るし、またそうしなければ日本企業は立ち行かないという危機感が、協会設立の大きな動機です。

グローバル経営からは程遠い日本企業の経営体制

日置 それから20年がたちました。この間、日本企業の海外での事業展開はさらに進み、海外企業を買収する日本企業も格段に増えましたが、それに伴ってファイナンス機能は相応に強化されてきたか。谷口さんはどう見ていますか。

谷口 残念ながら、依然としてワールドクラスのレベルまでには追いついていないように見えます。事業のグローバル化に伴って海外のオペレーションをどうマネジメントしていくのか、経営レベルで関与できていないという印象で、実際には業績管理に必要となるデータをどうやって整備するのかで大変苦労しているようです。

日置 グローバルでビジネスをする以上、どの程度の仕組みを整えなければならないか認識はしていたとしても、実装できていない企業は多いですね。なかには、何らかの問題が起きてから対応するためではなく、やりたいことをやる仕組みなのだということを、経営陣がいまだ理解していないケースもあります。

谷口 この20年間でCFOを置く企業は格段に増えました。また、CHROやGC(ジェネラル・カウンセル)、CLOも徐々にですが定着しつつありますが、本当にオフィサーとしての役割を果たしているのか、また、各CxO配下の組織が「横串」の機能を果たせているのかといえば疑問です。

 日本CLO協会の調査では、CLOや法務担当役員がいる企業は兼任も含めて5割を超えているのに、法務が経営と結びついているとの回答はわずか3割でした。残り7割は経営と結びついていないということになるわけですが、経営に結びつかない法務って一体どういうことなんだろうと頭を抱えました(図表参照)。

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日本CLO協会「ニューノーマル時代のCLO と経営法務機能の課題」2020年9月法務マネジメント・サーベイより
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