ワールドクラスでは、経理・財務(ファイナンス)、人事(HR)、法務(リーガル)のコーポレート部門が、事業部門はもとより全社戦略の立案と実行に主体的に関わっている。具体的にどのような機能(ファンクション)を備えているのか。今回は財務を例に、前デュポン取締役副社長(CFO)の橋本勝則さんに聞く。(マネジメント・コンサルタント 日置圭介)

響きわたる「キャッシュ、キャッシュ、キャッシュ」の号令

 新型コロナウイルスの感染拡大に対するワールドクラスの対応は、きわめて速いものでした。

 リモートワークや、海外拠点からの帰国指示の話ではありません。国や地域に縛られず、国や地域を超えて、機能を配置しているワールドクラスにとって、物理的な制約はそれほど問題にならないからです。

 真っ先に行われたのは手元資金の確保でした。「Cash is King」(現金こそが王様)であることを、経営トップから第一線の社員まで理解しているからです。

 橋本さんがこの9月まで取締役副社長を務めたデュポンも例外ではありません。

橋本勝則
橋本勝則(はしもと・かつのり)
前デュポン 取締役副社長(CFO)。慶應義塾大学商学部卒業、デラウェア大学修士課程修了(MBA)。YKKの英国CFO等を経て、1990年デュポン入社。米国勤務を経て2001年に財務部長、09年より取締役副社長としてダウケミカルとの合併・3社分割、グループのガバナンス等を担当した。東京都立大学大学院経営学研究科特任教授。共著に『ワールドクラスの経営』がある。

橋本「1月末の時点で、キャッシュ、キャッシュ、キャッシュの号令が、世界中の組織に響きわたりました。事業部は運転資金の圧縮、財務は借入枠の増額と返済予定の社債分を前倒しで調達しました。コロナの影響がどこまで長引くかを予測できない限り、できるだけ多くの現金を確保するのが、経営のイロハのイです」

 ところが日本企業の動きは実にのんびりしたものでした。第1次のピークとされる3月から4月にかけては、トヨタが1兆円の融資枠設定を金融機関に要請したのが目立ったくらいでした。

 長く続く金余りのせいでキャッシュリッチなところが少なくないせいでしょうが、この先1年も2年も続くといわれるコロナの影響を乗り越えるのに十分な資金が確保されているかは疑問です。