最高の戦略・最悪の戦略

楠木 この対談や『ワークマン式「しない経営」』の読者に、「使用上の注意」ならぬ「読書上の注意」をお伝えしておかなくてはなりません。

土屋 何でしょう?

楠木 マネしてくる競合他社が自滅する。これが最高の戦略です。逆に、自分が要素だけを模倣して全体の一貫性を忘れたために自滅してしまう、というのが最悪の戦略です。
ワークマンが具体的なレベルでやっていることをばらばらに取り出してマネするとやけどします。
「人間が不幸になるのは、自分とは似ても似つかぬものをマネするからだ」という名言がありますが、その通りです。

土屋 ワークマンをマネしてはいけないということですか。

楠木:土屋さんの本はよく読まれています。しばらくワークマンは悪影響を与えるのではないでしょうか。

土屋 悪影響ですか。

楠木 これだけ話題になると、経営幹部のなかに「これが新しい戦略なんだな」と勘違いして、「うちもアンバサダーマーケティングをやろう!」「エクセルを使ってデータ経営しよう!」と思っている人が出てくるかもしれません。私に言わせれば、それが【地獄の1丁目】です。

土屋 ワークマンのやっていることを一部分だけつまみ食いすると大変なことになるというわけですか。

楠木 戦略がストーリーとしてよくできていることの裏返しなんです。
ストーリーがない会社だったら、要素をマネしても特に問題はない。
成功した企業の表面や個別要素を見るだけではなく、本当の競争優位に目を向けてほしいのです。

(第3回へつづく)