不安、逃げ出したい時の勇気ある行動が、
あなたに幸福感をもたらす
私は拙著『スタンフォード式生き抜く力』で、ダライ・ラマの「人間は根本的に社会的な生き物で、それがゆえに、私たち人を思いやる力の『種』を持って生まれてくる。その力を発揮することが私たちの幸福や社会の繁栄に必要不可欠だ」という言葉を引用しましたが、ダライ・ラマは次のような言葉も残しています。
「人間として、私は自分の幸福が人次第だということを知っています。
そして人の幸福に関心を持つことは、道徳的な責任だと真剣に思っています。人類の未来が祈りや良心だけで実現するというのは、現実的な考えではありません。行動が必要です。ですから私の一番の責務は、力の限り人類の幸福に貢献することなのです」
「責任」という言葉に抵抗を持つ方もいるかもしれませんが、重松先生は次のように語ります。
「日本では、義理という言葉を、心がこもっていない、仕方なくやるものとネガティブに捉える方もいるかもしれません。
しかし、義理は「美徳」です。私の母は、ゼネラル・エレクトリック(略称GE。トーマス・エジソンが創業した世界的企業)で、初のアジア人女性として成功した、自由でキャリアもある女性でした。
そんな彼女の言葉が『義理と人情を忘れてはいけない』です。Responsibility(責任)とは、Response(応答)、Ability(能力)。つまり、社会から求められているものに、自分の能力を持って応えることといつも話してくれました」
「自分にできることはやる」という行動は、拙著『スタンフォード式生き抜く力』で取り上げた、「五常」の「仁」「義」と同じ。
やるべきことをやる正義感「義」と、思いやりの心がまえ「仁」を持って行動することが重要なのです。
心理学の研究で、健康向上の最良の方法の一つは、積極的に周囲に貢献することとされます。感謝の念を持とうなど心の意識も大事ですが、日常のささやかな親切などの行動こそが、幸福感につながるのです。
また、作家のオードリー・ロードは、恐れを乗り越えるために、ヴィジョン、ミッションが必要と説きますが、重松先生も、真の思いやりは、責任と共にあるとします。教育、指導、子育てなど責任を負うと感じる場面で、相手に全力を傾け、自分の能力を尽くす。この「ハートフルネス」こそが、あなたに大きな勇気と幸福感をもたらすのです。