コロナ禍をきっかけに
世界で存在感を高めたい米国

 ニューヨーク州では外国人であっても不法移民であっても、住民であれば無料でPCR検査を受けることができます。新型コロナウイルスの感染爆発が止まらない中、医療保険の有無で市民を選別する余地がなくなってしまったのです。

 経済封鎖を解除する以上、可能な限り感染の状況を把握するのは当然のことです。結果として米国は実質的に国民皆保険制度に向かって動き始めることになりました。

 トランプ政権は「社会保障番号(ソーシャル・セキュリティー・ナンバー=SSN)」を持つ人に対して1200ドルの現金給付も実施しました。SSN保有者への支給ということは米国民以外の居住者にも支給されたことになります。事実、私も1200ドルの現金を受け取ることができました。

 感染症対策としては、可能な限りPCR検査を多くの住民に提供し、同時に米国民または永住者に対して現金給付を実施しました。企業についても航空会社などへの支援をはじめ、米国籍の企業には、再びグローバル経済の牽引役として復活できるような手厚い支援を用意しています。

 トランプ政権は、これらの財政出動や重商主義的な政策によって具体的にどんな果実が得られるのかを常に意識しています。

 ブッシュ(子)大統領が進めたイラク戦争やテロとの戦いは米国に明確な利益をもたらしませんでした。その点、トランプ大統領は米国内の経済をコロナ禍から速やかに復活する策を講じ、重商主義的な政策から明確な果実を得られるように手を打ち始めています。

 トランプ政権の財政出動やFRBの資金供給に対しては、米国内の専門家から「現代貨幣理論(自国通貨で国債を発行できる国はインフレが危険水域に入るまで上限なく国債を発行できるとする主張=MMT)の実践で危険である」という批判が出ています。その是非についてここで触れるつもりはありません。ただ、それだけの資金を使う以上、可能な限り早く米国経済を復興させる必要があります。そして米国は、あわよくばコロナ禍をきっかけに世界における米国経済の存在感を一段と高めようと考えています。

 つまり、これから数年間の米国はこれまで以上に「アメリカ・ファースト」で行動していくつもりなのです。これは、2021年以降の民主党政権になっても変わらないでしょう。