休造蔵を復活!
元証券マンが醸す伝統製法の唐津の辛口地酒

小松大祐さんと定番の超辛口小松大祐さんと定番の超辛口 Photo by Yohko Yamamoto

「金は悪です」。キッパリ言い切る小松大祐さん。焼き物の町、佐賀県唐津市相知町の小松酒造7代目の蔵元杜氏だ。

 慶應義塾大学卒業後、大手証券会社でトップセールスマンとして活躍したが、金を巡って醜く争う人々を数多く見た。悩んだ揚げ句、高給取りの身分を捨て、実家の酒蔵を継いだ。

「酒造りでもうけた金は全て酒造りに返し、子供たちにはびた一文残しません」。

 戦時中は海軍御用達の清酒も手掛けた蔵だったが、先代の父は、日本酒に未来はないと休造を決め、蔵を閉じる準備に。

 大祐さんが蔵に戻って最初の仕事は在庫品の販売で、「トップセールスマンの経験から、俺に売れないものはないと思って」。だが、酒の説明ができずに苦戦する。

「酒造りからやらんと、酒蔵復活はなかばい」と決心。広島の酒類総合研究所や、島根の酒蔵で2年間修業。

 そして、恐る恐る造った酒が、福岡国税局鑑評会で優等賞を受賞。その後も入賞を繰り返す。

 特徴は丁寧な小仕込みによる酒造り。木の道具を多用し、米を蒸す甑も昔ながらの木製のものを使う。

 蔵は室町時代から続く日本最大級の「蕨野の棚田」に近く、県内有数の米の名産地。しかし、高齢で引退する契約農家が増えたため、田んぼを少しずつ引き受け、酒米栽培も開始。近年は麹の甘酒や、飲んでおいしい味醂も商品化した。

「新しいことに挑み、工夫するのが面白い」。飲めば、万の齢まで長生きできる商品を。大祐さんの挑戦は、まだまだ続く。

万齢 特別純米 超辛口万齢 特別純米 超辛口
●小松酒造・佐賀県唐津市相知町千束1489●代表銘柄:純米吟醸 万齢、特別純米 万齢、純米酒 万齢●杜氏:小松大祐●主要な米の品種:山田錦、雄町、西海134号、美山錦